「隠れΩ」とは、生まれながらにしてΩの性質を隠し持って生まれて来た人のことを言い、表面上はβと同じなため気づかないまま成長し。それは、覚醒しなければ問題なく変わらずに生活していけるが1度Ωとして覚醒してしまえば。
(つまり俺は、これからΩとして生きて行かなければならないってことか)
「終わりだ何もかも、くっ」俺は絶望感にうちひしがれ両手で頭を抱えて、うずくまる。
が、そんな俺に高林先生は思いもかけない事を言い
その言葉に、ゆっくり顔を上げると先生はニッコリ微笑んで。
(やっべ涙が出そう)
(この先生、面白い)
俺は自然と背筋を伸ばし真剣な眼差しで先生と向き合い。
(だから子宮はない)
(もう逃れられないってことか、くっ)
そう高林先生は俺に言ったフェロモンを抑える事ができるサプリメントをと、いつ発情が起きるか予測不可能だから万が一に備え飲んでおいて欲しい。
(それを飲んでいれば発情は抑えられるのか?いや…違うな、あくまでフェロモンを抑えるためのもので発情は避けられない世の中そんなに甘くはないってね)
先生は諭すように1つ1つ丁寧に教えてくれた薬はあるΩには抑制サプリαには抑制剤、しかし服用するにはリスクが伴う。
(そういうこと、なら仕方がね)
「すぐにでも私の所へ来て下さい」そう言われ診察室を出た「上手くいくのかな」ロビーで会計待ちしながら心の中で呟く。
・藤ヶ谷side
俺と横尾は、北山より先に来て高林先生の診察室の裏手にあるカーテンに隠れ2人の話を聞いていた。
(北山…)
ガチャ、バタン!
北山が出て行ったあとシーンと静まり返った部屋で俺らは言葉を発する事も出来ず、ただそこにいた。
言われてハッと気づき2人、顔を見合せ頷き合い「行こうか」「そうだね」
それは難しい、俺も横尾もプライベートではあまり北山と深く付き合ってはいない「どちらかというとタマや宮田の方が」でも彼奴らに協力を頼むわけにはいかないし。
(運命の番!?)
「ありが…と‥くっ」その心に、涙が出そうになる。
運命の番、Ωの一生をも左右する存在。
(本当にそうならば俺は北山の傍にいない方がいいのかもしれない、あいつの為に)
そう悩む日がこの日より続く事となる、自分の中に潜んでいる特別な想いとは裏腹に。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。