第6話

隠れていた性質①藤ヶ谷→北山side
北山のマンションから自分の家へ帰る道すがら俺は今日、起きた出来事を思い返していた。

滝沢
ここへ寝かせて


「はぁはぁ~」と荒い息をしていた北山、その姿を見ながら滝沢くんが。

滝沢
高林先生に連絡を入れよう
藤ヶ谷
どうしてですか?
滝沢
こいつの状態、尋常じゃあないよ
藤ヶ谷
まさか、だって北山は
滝沢
匂い、しているんだろ?
藤ヶ谷
それ…は


確かにしていた、微かだけど。

俺達αは自分がそうだと分かった時点でα特有の教育を受ける、いざというときパニックに陥らないよう
だからサンプルとしてΩが放つフェロモンも嗅いだ事があるんだ。ここ最近、北山から匂ってくる甘い香りはそれに似ていた。

滝沢
俺には、まだしていない
藤ヶ谷
滝沢くん
滝沢
でも、もしそうだったとしたら


(このままじゃ危険だ!)

藤ヶ谷
分かりました、すぐに来てもらえる
ようお願いします


俺は、急ぎ高林先生に電話をし。

藤ヶ谷
はい、そうです帝国劇場の…
宜しくお願いします


(だけど、どうして?)

滝沢
前に俺が言ったこと覚えている?
もし北山がΩだったとしたら
藤ヶ谷
‥‥っ
滝沢
そうでなければいいんだけどな


暫くするとコンコンとノックする音が聞こえ「高林です」「どうぞ」滝沢くんの言葉にガチャッと扉が開き入って来た30代くらいの男性。

高林
あっ、お久し振りです
滝沢
わざわざゴメンね
高林
いえ


どうやら、滝沢くんとは旧知の間柄らしい。

高林
で、倒れたというのは
藤ヶ谷
北山って言います俺の
滝沢
こいつの相棒
高林
なるほど、ちょっと失礼しますよ


先生は、ソファーで寝かされている北山の傍へ行き聴診器を当てたり脈を取ったり瞳孔を見て額に触り考え込むような仕草をし。

高林
熱を測ってみましょう
藤ヶ谷
先生、北山は
滝沢
しっ


先走った俺を滝沢くんが制し「今は任せて」そう
言って、でも俺は気が気じゃなくて北山がいなけ
ればグループを引っ張っては行けない。

なんだかんだいって、こいつのリーダーシップが
あったればこそ俺達はここまで来れたようなもの
だったから。

高林
念のため血液検査もしてみます症状的には貧血ですが少し熱もあるので
藤ヶ谷
先生
高林
それと


高林先生は、クルッと俺らの方を向いて。

高林
藤ヶ谷さん今でも彼から匂いは
していますか
藤ヶ谷
はい
高林
それは徐々に強くなっているのでは?
藤ヶ谷
言われてみれば
高林
滝沢さん、これはまだ憶測の
段階ですが
滝沢
なんでしょう
高林
彼は
滝沢
‥‥っ


(そん…な‥)

運転手
お客さん着きましたよ
藤ヶ谷
あ、はい、これで
運転手
有り難うございました


バタンと閉まるドアの音、それと同時に頭の中で
高林先生から言われた言葉が響き渡る。

高林
滅多にいない希少種です
滝沢
じゃ北山は
高林
私もお目にかかった事がないので血液検査の結果を見なければハッキリとしたことは言えませんが


(可能性は高いと…)

βの性質の中で稀にΩのDNAを持って生まれてくる子がいるという。

高林
いわゆる隠れΩと言われている
タイプで


隔世遺伝によるものと考えられ、しかし必ずしも
変異すると決まってない。

あくまで隠れているわけだから第二次性徵期検査のときも結果は当然の如くβと出る、万が一覚醒したとしてもその時期は未定で「いきなり発情して分かる…」なんて事もあるらしい。

それで、本人もそうだと気づかないまま強姦されてしまった例も。

滝沢
体調不良は?
高林
Ωへと変異していく中で起こっている症状だと受けとれば
藤ヶ谷
もし、もしそうだったとしたら!?
こいつは北山はどうなるんです!
滝沢
藤ヶ谷
藤ヶ谷
今まで頑張って来た努力・デビューへの道・俺達の夢・グループの行く末、先生!
滝沢
落ち着け今は、こいつをゆっくり
休ませてやる方が先決だ
藤ヶ谷
滝沢…くん、くっ
滝沢
北山の中で身体が変化して
いるんだとすれば
高林
これから益々、熱も出て倦怠感や
吐き気・頭痛や腹痛、貧血などが
起きるでしょう


なんせ自分の意思とは関係なく勝手に身体が性転換してしまうようなものなんだから。

(北山、俺はお前に何をしてあげればいい?どうしたら)

高林
一応、飲んでおいた方がいいと思うので性質を隠すサプリメントを処方しておきます、それから


「1週間後に検査の結果が出る、それまであまり
無理をさせないようにしよう」そう滝沢くんと話
した、自分たちが出来る精一杯のことをしてあげ
ようと。




.北山side

翌朝、怠さを感じながらもベットから這い出た俺は「ふぅ、メシ食うべ」でも食欲がない。

(参ったな、これじゃ体力がつかないや)

今日も革命の稽古はある、みんなに特に滝沢くんには迷惑をかけたくはなかった。

と、その時チャイムが鳴り出てみれば。

横尾
おはよう、調子はどう?
北山
よっ、横尾さん!?


驚いたってもんじゃない!?今までプライベートでも会ったりした事なんてなかったのに家に来るだなんてさ。

横尾
朝からゴメンねぇ~上がってもいい?
北山
あ、うん、どうぞ


ガチャっと開ければ、手にいっぱい買い物袋を下げた横尾さんが立っていて。

北山
へっ?
横尾
キッチン借りるよ
北山
はあっ?ちょ、なに


ズカズカと入り込み、おもむろに持参していたエプロンを身につけ、それもしっかり自分のメンバーカラーの。

北山
あの~
横尾
どうせ何も食べてないんでしょ


(あはっ、せいか~い)

横尾
待ってて今なにか美味しいもん
でも作るから


(マジですか!?)

ちゃっちゃか、チャチャカ手際よく料理してく横尾さん。

北山
へぇ~上手いもんだ
横尾
好きなんだよね俺、こういうの


覗き込んで見ていたら、今までにないほどの笑顔でそう言って笑った。

横尾さんは怒るとメンバーいち怖い、礼儀や行儀に厳しく、それは自分のファンに対しても例外ではないほどで出待ちしているファンの子に説教するくらい。

その横尾さんが、優しい目をし俺んちのキッチンに立って料理をしているだなんて奇跡に等しい。

横尾
出来たよ
北山
おっ、うまそ


目の前に差し出された「ご飯」それは、梅肉と豚肉のサラダにそうめん。

横尾
これなら食べれるでしょ
北山
朝からお肉ちゃん最高
横尾
北山、お肉が大好きだからね
北山
んふふっ、いっただきまーす
うんめぇ


俺は無我夢中で食った、その姿をニコニコと微笑みながら見つめている横尾さん。

横尾
野菜スムージーも作っておいたから
北山
んっ?
横尾
ほうれん草でしょ人参にもやし沢山の野菜とフルーツも入れて、あと豆乳
北山
ふ~ん、もぐもぐっ
横尾
ビタミンと食物繊維が豊富で身体にもいいんだ稽古の合間にでも飲んで
北山
Thank You、もぐもぐ、ん~でも…さ
横尾
あっ、藤ヶ谷がね
北山
えっ




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