第9話

再会①北山side
うつらうつらしている意識の中で、聞こえて来た
慣れ親しんだ声。

藤ヶ谷
あとは頼んだよ
横尾
任せて藤ヶ谷


(んっ?藤ヶ谷)

藤ヶ谷
じゃ、行って来る


ガチャ、バタン!

ドアを開け閉めする音がしハッと我に返ったように目を覚ます。

北山
藤ヶ谷!
横尾
おはよう北山
北山
横尾…さん?


が、ガバッと飛び起きた自分の目の前にいたのは
横尾さんで。

北山
あれ今、藤ヶ谷の声が聞こえ
なかった?
横尾
仕事へ行った
北山
なんの?
横尾
それより調子はどう?
北山
どっ、どこへ行ったわけ?あっ
横尾
危ない!


立とうとした瞬間に、グラッと身体が傾き横尾さんが支えてくれる。

横尾
無理しちゃダメだって
北山
…っ、悪い
横尾
藤ヶ谷は別の仕事があるからって出て行った、けど午後には合流する
北山
んだか
横尾
朝ごはん食べれる?無理なら
スムージーだけでも


(顔、見たかったな…)

横尾
後で会えるでしょ、ふっ
北山
あ、あぁ
横尾
まるで恋する乙女みたい
北山
ばっ、バカ言ってんじゃね!だいいち俺も藤ヶ谷も
横尾
関係ないじゃん


(そりゃ男でも子供が産めるΩなら、んっ?オメガ)

横尾
はい、これを飲んで
北山
あんがと、ゴックン
(確か、Ωってさ)

頭の中に浮かんできた遠い記憶の破片それは中学のとき、まだ家には父さんもいて。

今日、あの日でしょ
北山
んっ?
ほら、血液検査
宏光も、そんな歳になったんだ
やだわぁ~お父さん、まだ中2よ

あの日、学校で俺は第二次性徵期検査を受けた。
結果は…


βかぁ~
あら不服?
いや、αはαで大変だから
まるで宏光が、αだったら良かった
みたいな口ぶりね
そんな事はない


(うん間違いない母さんだって言ってた俺はβだって、なのに何だろう?)

横尾
北山、稽古は午後からだし
少し休んでれば
北山
横尾さん
横尾
んっ?
北山
俺、なんの病気?
横尾
だから、貧…血


「嘘だ」直感的に思う。

横尾
あ、薬も飲んでね
北山
うん
横尾
しかし熱が下がって本当に良かった


ここ最近 自分の身に起きている異変、それが心
に不安を落とし。

(Ωの症状って、どんなんだっけか?)

横尾
どうかした?
北山
えっ
横尾
なんか考え込んでいるみたいだけど


「小学生のとき学校で習わなかった」

(滝沢…くん、こんなふうになるんだったら、ちゃんと聞いておけば良かった)

横尾
北山?
北山
あ、なんでも…ない
横尾
‥‥‥
北山
俺さ
横尾
んっ?
北山
あんま覚えてなくて
横尾
そのこと?藤ヶ谷から携帯に
電話が掛かって来たでしょ
北山
おう
横尾
そのとき様子が変だったから


ペラペラ、ペラペラ、これまでの経緯を簡単に説明してくれる横尾さん。でも俺の心の中にはどんどん不安が広がっていき。

横尾
で、高林先生が
北山
その先生って、うちの
横尾
そう事務所で委嘱している病院の先生
北山
この間、俺を診てくれたっていう?
横尾
北山に伝言がある


その数日後、俺はその高林先生がいる病院の前に
立っていた。

けして大きくはないけれど入院設備もあり、企業で言えば中小企業のような規模の大きさの建物で名前は「桜が丘クリニック」

(ふ~ん、何科とか書いてないけど大丈夫なのかな?)

自動ドアは二重になっていて中へ入ると淡いピンク色のカラーがメインの内装は、さながら名前の通り桜をイメージしたかの如く優しい雰囲気を醸し出している。

ロビーを突き抜ければ受付の人が「初めてですか」と笑顔で迎えてくれ。

北山
高林先生から検査結果を聞きに来る
ように言われたんですけど
受付
お名前は?
北山
北山宏光です
受付
少々お待ち下さい


すると、その人は内線を掛け「はい、そうです」
そして一瞬「あっ」というような顔をし「分かり
ました」そう言って電話を切ると俺の方を見つめ。

受付
2番の扉の前で、お待ち下さい


「2番ね…あ、あった!ここだ」その近くのソファーに腰をかけ、呼ばれるのを待つ。

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北山さん診察室2番の中へ
お入り下さい


「ういーっす」ほいよと立ち上がって、コンコンとノックをし扉を開ければ。

高林
こんにちは、お待ちしていましたよ


高林先生が笑顔で迎えてくれ「優しそうな先生だな」それが第一印象、初めましてっと挨拶すると。

高林
そうですね貴方からすれば
私は3回目ですけど
北山
ぁ…‥


「どうぞ座って下さい」言われるがまま、目の前の椅子に腰を掛ける。

高林
調子は如何です?
北山
…俺
高林
北山さん今あなたの胸の内は不安で
押し潰されそうになっている、そう
ではありませんか?
北山
えっ、どうしてそう
高林
表情を見れば大体の察しはつきます


(さすが事務所が委嘱した病院の先生のことだけは
ある、この先生なら信用できるかもしんね)

北山
教えて下さい俺の病気は
なんなんですか?
高林
貴方は病気ではありませんよ
北山
でも
高林
第二次性徵期検査の結果を
覚えていますか?
北山
はい


確実に俺はβだった事務所に入るときにもその結果を提出し。

高林
しかし今の症状からすると
貴方は間違いなく


(そん…な)

高林
検査の結果、あなたの血液から
Ωの数値が出ました
北山
マジで!?
高林
隠れΩをご存知ですか?


(なんだよそれ?そんなの聞いた事がない小学校でも中学のときにも習わなかったし)

北山
俺、Ωなんですか!?
高林
正確には、なりかけている…ですが
北山
途中ってこと?
高林
はい貴方の身体は変異しようとしていますΩになるのも時間の問題でしょう
北山
そんなバカな





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