第11話

再会③北山side
(はぁ、もう溜め息しか出ない)

ロビーの椅子に座り改めて周囲を見渡すと、ここってどうやらそういった連中が通っているクリニックみたいで。

高林
心配はいりませんΩとαは診察時間を別にしてあります


(とか言ってたし…)

高林
それに基本、往診することの方が多いんですよ


(つまり直接ここへ来る人はβの方が多いってわけ?そりゃそうだよな、でなきゃやってはいけない数が少ないΩとαの相手だけじゃ)

そのとき俺の座っているソファーの横を1人の妊婦が通り過ぎる。

(あれ?あいつ男じゃ)

もう臨月に近いほど膨らんでいるお腹…ってことは間違いなくオメガ、一緒にいる男と仲良さげに話をしている何処か見覚えのある横顔。

α男
ここに座ってな
Ω男
分かった


ニコッと笑った顔に、何故だか懐かしさを覚え。

.
一緒に学校へ行こう宏光
北山
おう


「えっ、まさか!?」記憶がワープしたかの如く過去へと遡る。

.
どうしよ俺、Ωだったら
北山
大丈夫だって希少種なんだろ滅多にいないって先生も言ってたじゃん
.
うん、でも


不安げな表情と、目の前にいる妊夫の顔が重なって見え身体が小刻みに震えた。

受付
北山さん、北山宏光さ~ん


呼ばれた瞬間、クルッとその顔がこっちを向き俺のことをジッと見つめ。

主婦
中村さんちの将也くんが!?
.
Ωだったんですって
主婦
それで大騒ぎに?


(そんな偶然ってある?)

将也は近所に住んでいた幼馴染み、俺達は保育園から一緒でサッカー友達でもあり。

そう、施設へ
将也の母
覚悟はしていたんです
私の母もΩでしたし
えっ、そうなの!?


あの日のことは鮮明に覚えている、あいつの母親が早朝うちへとやって来て。

将也の母
うちの人えらいショックを受け
ご主人、出て行ってしまったんですか
将也の母
だから、そうするしかないの


第二次性徵期検査の結果Ωだったから息子を施設へ入れるんだと母さんに言ってよ、そこで保護してもらい護ってもらうんだと。

俺は…

北山
将也、あいつは今どこに
宏光!?あなた聞いていたの!?
将也の母
あの子は


急ぎ外へ出ると、そこには荷物を積み込んだ引っ
越しマークのトラックがあって横に。

北山
将也
将也
宏光
北山
行ってしまうのか
将也
…ごめん
北山
なっ、謝ることないじゃん!
お前が悪いわけじゃない
将也
そう…だけど
北山
元気で俺お前と友達になれて
良かった
将也
俺も楽しかったよ


その瞳は涙で濡れていて気がつけば自分も、これが初めて俺がその特殊な性別により友達を失った瞬間だった。

受付
北山さん
北山
あ、はい


慌てて受付へ行くも後ろから感じる視線に気もそぞろで「将也…だよな?」

受付
処方箋が出ています薬局で受け取って帰って下さい
北山
分かりました


確かめたい、けど確かめられない。

(だってなんて聞く?別れたのは中学のとき、お互いまだ子供でさ面影があるってだけじゃ)

α男
将也


(なっ!?)

とたん身体が硬直し「受付を済ませたから病室へ行こう」そう言った連れの男の言葉に。

(やっぱり将也だ)

「待ってくれ」思わず声を掛けた、瞬間に驚いた顔をし俺を見つめ。

将也
もしかして宏光?
北山
将也!
将也
宏光!
北山
うわっ


ギュッと抱きついて来た将也の身体がボコンと俺を何かで弾き飛ばした。

将也
あ、ゴメン…腹が
α男
クククッ、あはははっ、悪いねぇ~
うちの子が、ぷぷぷっ


そう言って、隣の男が将也の膨らんだ腹を擦りつつ笑い。

北山
ぁ…‥
将也
三つ子なんだ
北山
みっ、三つ子おぉ~っ
α男
あれ知らないんだ?Ωは多胎児が
多いんだぜ


(そう…なん‥?)

α男
将也の友達?
将也
宏光とは中2まで一緒だった
α男
幼馴染み?
北山
ん…まぁ
α男
俺は、こいつの番で蒼汰っていう
北山
おっ、おう


(つう事は、その…男同士でセックスするんだよな?いや、したからデキたのか)

蒼汰
時間ある?
北山
少しなら
蒼汰
久しぶりに会えたんだろ?せっかくだし話していけば
将也
俺、これから入院するんだ
北山
入院?
将也
帝王切開、多胎児だからね自然分娩は無理ってことで
北山
ぶぶぶ、分娩…って


(産むの!?将也が)

北山
ふっ、普通はどうやって?
蒼汰
部屋へ行こうか


俺達は、エレベーターに乗り将也の病室へと向かった。

蒼汰
ほら座って
北山
ども
将也
宏光、今なにをやっているんだ?
北山
えっ


その問いに言葉が詰まってしまう、某有名な事務所に入っているだなんて言えるわけがない。

蒼汰
お前はベットで寝ていな
将也
ちぇっ


が、蒼汰ってやつにそう言われ渋々とベットの中へ潜り込む将也。しかし、こいつは将也のことを凄く労っていて「大切にされているんだな」その幸せそうな姿に心が和む。

蒼汰
さっきの話しの続きなんだけど
北山
おう
蒼汰
Ωの男が産む子はアスベイビー
って言ってな
北山
あっ、あっ、アス?
蒼汰
ベイビー、くすっ
北山
なんだ?そりゃ
将也
ベイビーは赤ちゃん
北山
んなの言われなくたって分かっている
蒼汰
ぷっ、あははっ、面白いな~お前ら


(いちいち笑うんじゃね)

「アスっていうのはココ」そう言うと、蒼汰は俺の方へ尻を向け。

北山
けっ、ケツか!?
蒼汰
くくっ、尻の孔でセックスをし尻の孔から出てくる赤ん坊
北山
ぁ…‥
蒼汰
つまりアスは、お尻の孔という意味


(なるほど1つ勉強になった)

蒼汰
お前、珍しいΩだな
将也
えっ、宏光はβだったんじゃ
北山
将也…
蒼汰
Ωだろ?その処方箋サプリメント
じゃないの
将也
宏光?
北山
‥‥‥


黙ってしまった俺の顔を心配そうに覗き込む将也。

将也
俺がいなくなってから何があった?
北山
くっ、俺…な
将也
うん


心が雪解けのように溶けていく優しい友の声を聞きながら。

北山
実は…さ
将也
なに?

心配してくれる友がいる、すべてを話せるダチが
いる。


北山
隠れΩだったんだ
将也
‥‥っ


それだけで生きて行けるさ、この世界をきっと。