第9話

#8
353
2018/03/16 12:21

___

午前四時.

嗚咽混じりに顔を上げる.
ベッドをテーブルのようにして床に座り,ベッドの上にはカッターと裁縫セット,包帯.

だけど真っ白な手.




もう嫌になっていた.





なんだか分からなくなって混乱して,また過呼吸になり,カッターを震える手で握るが,

切れなかった.

ただただ無傷な手に,自分の弱さが表されるだった.


____

L I N E


「茜羅ぁ!昨日はほんとありがとう!楽しかった!!笑」




____



泣き腫らした真っ赤な目でスマホを見つめる.


夕立 茜羅
夕立 茜羅
やっぱ...現実なのね...

大きなため息の後に,立ち上がると目眩がした.


吐き気もする.


やばい...



見事に吐いた.

よたよた階段を降りてリビングへ行く.





これ死ぬのか
祖母
どうしたの!?
だっ大丈夫!?あぁっもうお風呂行って!!


___


病気になってから初めての嘔吐.

気持ち悪かった.



死がそこまで来ているのを,少し実感して,心臓が締め付けられた.
祖母
はい.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
ん...ありがとう
温かい.

寒い日はいつも祖母が出してくれたココアが.今日はより暖かかった.



あぁ,そうだ.
これも飲めなくなるのか.




こぼれた涙が頬を伝ってココアへ落ちていった.



私絶対病気になってから情緒不安定になってる気がする.

_
祖母
ねぇ茜羅
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...なにぃ
祖母
ちょっと知り合いの図書館手伝いに行くんだけど,行く?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
いい
祖母
...そぅ
祖母が寂しそうな顔をする.

私を置いていくのが不安なのだろうか.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
ふふっ.
やっぱ行く


___
泣いたり笑ったり,忙しい人だ.
- 車 -
祖母
茜羅...なんて声をかければいいかわからないけれど,あなたのことを本当に想ってるからね.誰よりも.
いきなり言われて,思わず窓から祖母の顔に目をやる.


目は微かに潤んでいた.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
......
夕立 茜羅
夕立 茜羅
どうしたの,いきなり.
おばあちゃんらしくないね.
...私は私.何も変わらないし,運命だよ,うん.
祖母は,「良かった」と一言言って,笑った.

私が早く死にたいと思っていることも知らずに.

_
祖母
大体1時間から2時間だから,本読んでてね.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
うん.

おおぉ...




思ったより本当に大きくて綺麗だった.

でも平日だから,居るのは勉強をしに来てる人5,6人だけだった.


雨夜さんとか,来るかな.

でも見た目によらずハイテンションだからこの空気は無理か...
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...でもほんと本あるなぁ
大きな棚にずらーっと並べられた本達に触れながら歩いていく.






ドンッ 
夕立 茜羅
夕立 茜羅
わっ...
突き当たりで右に曲がった瞬間,なにかと衝突.

そして落ちる本.
伊武 透
伊武 透
いったたた
夕立 茜羅
夕立 茜羅
す,すいませ...ん
倒れてもいないのに痛いと騒ぐ相手は,黒髪のセミロング.

ヘッドフォンと制服姿の女子だった.
伊武 透
伊武 透
おおぉっすいませんっ!!
音楽聴いてたもんで...へへへ...
そう言いながら本を拾う彼女を手伝う.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...そ,それじゃ

なんか...凄いへらへらしてる子だったな.

あんな子は友達がたくさん居るんだろうな.

__


それにしても何をすればいいか分からない...

最新の大きな図書館は,居るだけで孤独を感じた.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
端の方まで行った時,漫画が並んでるスペースがあるのに気がついた.

今の図書館は漫画まで置いてあるのか.


適当に知ってる漫画を手に取り席に座る,時間を確認すると11時.

吐いたおかげで休めたけれど,このまま行かなくて済むといいのに.

ピコン


___
LINE



ⅹⅹ「最近ゴミが登校してなくて草」
ⅹⅹ「それな.教室が綺麗で清々しいねw←」





ⅹⅹ「いつ死ぬのかな」
__

ズキンと痛む心臓をおもわず抑える.
伊武 透
伊武 透
そこのきみ!
ふいに背後から,㌧㌧と肩を叩かれる.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
んぁっ...はいっ
伊武 透
伊武 透
隣,いいですかい?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
どうぞ...

この子,さっきの子だよね.


なんで隣なの!?
席なんてめっちゃくちゃ余ってるんだけど
伊武 透
伊武 透
東ⅹ喰種知ってるの...!?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
え...あ...うん
伊武 透
伊武 透
ンンンンンンンンッ
なにか溜めている.
伊武 透
伊武 透
同士だぁぁぁぁぁあ!!!!
夕立 茜羅
夕立 茜羅
ひっ...
図書館ということを忘れているのだろうか.
伊武 透
伊武 透
うち,伊武 透って言います!
身近に東ⅹ喰種知ってる人ぜんっっぜん居なくてうちもびっくりしてるんやけど,同士に会えて凄い嬉しい...
夕立 茜羅
夕立 茜羅
そ,そうなんだね.
伊武 透
伊武 透
いやぁぁあやっぱ同士に会えるって最高だね...!!
それはreの12巻だね!?もう表紙の米森ちゃんが可愛すぎてびっくりだったよぉ,でも中身は予想をはるかに超えてあのシーンがッッッいやぁァァ作者のイスさんもあんなシーン描くんすね...へへっ...でもy
知り合って何秒かで熱く語りだす彼女を苦笑いで流しながら彼女をよく見ると,制服は近くの高校だった.

首にかけたヘッドフォンから繋がるコードはポケットの中へ繋がっており,ヘッドフォンからはPOPなボカロ系EDMが流れていた.
伊武 透
伊武 透
ところで,名前は?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
夕立茜羅...です
伊武 透
伊武 透
おぉお...かっこええ名前やな!!
にひひっと笑う彼女の真似をして笑ってみる.

やばい...

なにがやばいか分かる?


どうして人が寄ってくるの.


なんで...


くそかよ
今までゴミクズのように扱われてたのにいきなりなんなんだよ...。




__絶対神様性格悪い

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