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午前四時.
嗚咽混じりに顔を上げる.
ベッドをテーブルのようにして床に座り,ベッドの上にはカッターと裁縫セット,包帯.
だけど真っ白な手.
もう嫌になっていた.
なんだか分からなくなって混乱して,また過呼吸になり,カッターを震える手で握るが,
切れなかった.
ただただ無傷な手に,自分の弱さが表されるだった.
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L I N E
「茜羅ぁ!昨日はほんとありがとう!楽しかった!!笑」
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泣き腫らした真っ赤な目でスマホを見つめる.
大きなため息の後に,立ち上がると目眩がした.
吐き気もする.
やばい...
見事に吐いた.
よたよた階段を降りてリビングへ行く.
これ死ぬのか
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病気になってから初めての嘔吐.
気持ち悪かった.
死がそこまで来ているのを,少し実感して,心臓が締め付けられた.
温かい.
寒い日はいつも祖母が出してくれたココアが.今日はより暖かかった.
あぁ,そうだ.
これも飲めなくなるのか.
こぼれた涙が頬を伝ってココアへ落ちていった.
私絶対病気になってから情緒不安定になってる気がする.
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祖母が寂しそうな顔をする.
私を置いていくのが不安なのだろうか.
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泣いたり笑ったり,忙しい人だ.
- 車 -
いきなり言われて,思わず窓から祖母の顔に目をやる.
目は微かに潤んでいた.
祖母は,「良かった」と一言言って,笑った.
私が早く死にたいと思っていることも知らずに.
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おおぉ...
思ったより本当に大きくて綺麗だった.
でも平日だから,居るのは勉強をしに来てる人5,6人だけだった.
雨夜さんとか,来るかな.
でも見た目によらずハイテンションだからこの空気は無理か...
大きな棚にずらーっと並べられた本達に触れながら歩いていく.
ドンッ
突き当たりで右に曲がった瞬間,なにかと衝突.
そして落ちる本.
倒れてもいないのに痛いと騒ぐ相手は,黒髪のセミロング.
ヘッドフォンと制服姿の女子だった.
そう言いながら本を拾う彼女を手伝う.
なんか...凄いへらへらしてる子だったな.
あんな子は友達がたくさん居るんだろうな.
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それにしても何をすればいいか分からない...
最新の大きな図書館は,居るだけで孤独を感じた.
端の方まで行った時,漫画が並んでるスペースがあるのに気がついた.
今の図書館は漫画まで置いてあるのか.
適当に知ってる漫画を手に取り席に座る,時間を確認すると11時.
吐いたおかげで休めたけれど,このまま行かなくて済むといいのに.
ピコン
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LINE
ⅹⅹ「最近ゴミが登校してなくて草」
ⅹⅹ「それな.教室が綺麗で清々しいねw←」
ⅹⅹ「いつ死ぬのかな」
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ズキンと痛む心臓をおもわず抑える.
ふいに背後から,㌧㌧と肩を叩かれる.
この子,さっきの子だよね.
なんで隣なの!?
席なんてめっちゃくちゃ余ってるんだけど
なにか溜めている.
図書館ということを忘れているのだろうか.
知り合って何秒かで熱く語りだす彼女を苦笑いで流しながら彼女をよく見ると,制服は近くの高校だった.
首にかけたヘッドフォンから繋がるコードはポケットの中へ繋がっており,ヘッドフォンからはPOPなボカロ系EDMが流れていた.
にひひっと笑う彼女の真似をして笑ってみる.
やばい...
なにがやばいか分かる?
どうして人が寄ってくるの.
なんで...
くそかよ
今までゴミクズのように扱われてたのにいきなりなんなんだよ...。
__絶対神様性格悪い
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。