第10話

#9
341
2018/03/23 14:43

- 図書館 -
夕立 茜羅
夕立 茜羅
......あの
伊武 透
伊武 透
ん~?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...なんでめっちゃガン見してくるんですか.
あまり関わらないようにしようと黙って続きを読み始めると,伊武と名乗った彼女はわざわざイスを私へ向けてキラキラした目でガン見してきた.

1分たっても続けているので流石に話すしか無くなってしまった.


もう...できる限り人と接したくないのに.
伊武 透
伊武 透
だってな!めっちゃ綺麗やなぁ...って思って!!
夕立 茜羅
夕立 茜羅
はい?
え?
伊武 透
伊武 透
透き通った肌に,ゆるふわショートヘア...吸い込まれそうな黒い瞳...!!!!
伊武 透
伊武 透
絵に描きたい!!!
べた褒めされては照れないわけがない.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
えぇ...いや...
夕立 茜羅
夕立 茜羅
いっ 伊武さんだって,
髪さらさらだし...その...目、も青っぽくて...良いと思います...けど...
伊武 透
伊武 透
ほほほ
伊武 透
伊武 透
そんなに褒めんといてや♡
てかてか,タメでええよ?
いぶって呼んでおくれん

独特な話し方,というか接しやすい人なんだろうな.


私の中身をまだ1ミリたりとも知らずに上部の私に触れている.

残念だね,

ふうがだって...

本当の私なんて誰も知らないけれど.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
いぶちゃん.
伊武 透
伊武 透
ちゃん呼び...!?✨
なんだいなんだい
夕立 茜羅
夕立 茜羅
いぶちゃんはいつもそうなの?
伊武 透
伊武 透
んぇ?この性格のことかい?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
そう...よく知らない相手にまで頑張って気軽そうに話しかけて,自分のペースに引き込んでいく. 裏の自分は出さないように大げさに明るくする.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
そんなことしてたら,いつか絶対自分が崩れると思うな.

くそうける.
何言ってんの私.

めっちゃ感じ悪すぎだろ.


ごめんなさい.

こうやって人を傷付けて,ひとりになって,死んでいくんだ.


今まで草舟みたいに流されてきた私の方が,自分のペースなんてものも分からずにいるくせに.

自分を保ちながらも頑張って笑顔でいる彼女に私から説教される筋合いはない.


早く.

早く早く早く!!!!
何こいつって思ってどっか行ってよ......



はやく...お願いだから...
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...
チラッと彼女を見てみた.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
伊武 透
伊武 透
ŧ‹”ŧ‹”( ‘ч’ )ŧ‹”ŧ‹”
彼女は幸せそうにポッキーを食べていた.

夕立 茜羅
夕立 茜羅
ちょっ,何してるの?
伊武 透
伊武 透
ポッキータイムなのだ
ポッキーを片手に持ちながらもう片方の手でポッキーを差し出す彼女.


この子は,馬鹿なのか.


私がおかしいのか.







後者...なのか
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...ありがとう
小さな声で呟いて,
夕立 茜羅
夕立 茜羅
ふっ...はははっ(笑)
笑った.
伊武 透
伊武 透
んぉおおおおお!!!!
伊武 透
伊武 透
せんちゃんが笑った!!!ふふふっ(笑)

その一瞬だけは,悩んでいたことがすべて一旦離れたように感じた.



3秒後にはまたべっとりくっついたけれど.

そして,思い切り心臓をナイフで切り裂きたかった.
しねばいいのに
わたしなんか,はやく.

神様,もういいだろう.




趣味の悪い悪戯はもう散々だ.
はやくころしてくれ.



伊武 透
伊武 透
そうだ!!!!
伊武 透
伊武 透
うちここからめっちゃ家近いんやけどくる!?
夕立 茜羅
夕立 茜羅
家...?



___


数十分後.


私はいぶちゃんの家の前に立っていた.
祖母にはいぶちゃんがご丁寧に説明をぺらぺら話していて,祖母は喜んでいるようだった.らしい.
伊武 透
伊武 透
ただいまんもす
返事はない.

夕立 茜羅
夕立 茜羅
お邪魔します.
伊武 透
伊武 透
今両親は旅行中なんよ~
羨ましい......
伊武 透
伊武 透
あっ私の部屋は2階上がってすぐやから入って待ってておくれ!!
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...うん
二階建ての,ごくごく普通の家.

階段を一段一段登っていく.
まず人の家に入るということが新鮮で,空気が全く違う気がした.


他人の家の温かさが,気持ち悪かった.

登ってすぐのところに,「TO-RU」とかかれたドアが目に入った.

でも意識はすぐに,隣の部屋に集中した.

目の前には扉が開いたドア.

ドアの向こうには部屋があって,真正面に窓があった.
真っ青な空と風が,私の髪を揺らす.


何故か足を踏み入れてしまった.
部屋の中は,いろんな紙で満たされていた.

絵を...描いているのだろうか.

1枚の絵を拾いあげてみると,そこには真っ白な少女が描かれていた.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
綺麗...
絵で綺麗だと思ったのは初めてかもしれない.

伊武  彩
伊武 彩
見つけた.
またまた突如声をかけられた.


だがあまりにも予想外すぎて思い切りびくついてしまった.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
あっっぅ...ほんと...ごめんなさい...
伊武  彩
伊武 彩
君だよ...君...
ずっと探してた...
たったったったったっ
軽快な階段の登る音が聞こえたと思うと,
伊武 透
伊武 透
あぁぁあ!!
おねぇちゃん帰ってたの!?
伊武  彩
伊武 彩
まぁね
伊武 透
伊武 透
LINEくらいちょうだいな
ていうかお母さんとお父さん旅行中なんやけど...
伊武  彩
伊武 彩
まじか,まぁいいや
良いモデルさん見つけたし♡
そう言うとその女の人は私にウィンクして部屋を出ていった.
伊武  彩
伊武 彩
はぁぁ、てかとーるの友達にこんな美少女いるなら早く教えてよね~もう
女の人はそんなことをぶつぶつ言いながら階段を降りていった.


あの人は,誰だったのだろう.
髪型はいぶちゃんと似てるが薄ピンク色で,大きめの眼鏡をかけていた.


いぶちゃんはどちらかというと可愛い妹系だが,あの人はクールなお姉さん系...とでも言えば伝わるかな.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...お姉さん??
伊武 透
伊武 透
そそそ!
わいの姉様はイラストレーターやっててね,良きモデルが居ない~~って言って東京行っちゃってさ~,こうやっていきなり帰ってきたと思えば...
伊武 透
伊武 透
せんちゃん気にいられたみたいやな...
ごめんねせんちゃんよおお
夕立 茜羅
夕立 茜羅
えっ...どういうこと??
モデッ...え??お姉ちゃん?
私が混乱してる間にも,部屋に散らばっていたイラストたちはいぶちゃんによって机に重ねられていた.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...いや,謝るのは私だよ.
お姉さんの部屋に勝手に入ったり...
伊武 透
伊武 透
まあまあいいのよ!!
伊武 透
伊武 透
うちもそうやったしな.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
え?
伊武 透
伊武 透
ほら!うちの部屋は隣やで!笑
いこいこ( ´° ³°`)
夕立 茜羅
夕立 茜羅
あっうん...

なにが...一緒だったんだろう

少し気になったけれど,初めて人の部屋に入るという緊張ですぐにそのもやもやは消えてしまった.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
お邪魔...シマス...
伊武 透
伊武 透
そこら辺座っといてやーー
青と白で統一された,綺麗な部屋.

所々にアニメのグッズとかが置いてあった.
いぶちゃんは机の前のイスに立ち膝で乗って本棚を漁っていた.
しばらく私がキョロキョロしてベッドにゆっくり座ろうとした時,いぶちゃんが あった!と大きな声を出したのでびっくりして床に座ってしまった.
伊武 透
伊武 透
じゃーん!!!
夕立 茜羅
夕立 茜羅
...これは??
私の前に突き出された本...ノート?には「 東ⅹ喰種 」と書いてあった.
夕立 茜羅
夕立 茜羅
東ⅹ喰種の...?
伊武 透
伊武 透
実はうちな,今絵を練習してんよ!
でもさっきも言った通り東ⅹ喰種好きな人少なくて...
伊武 透
伊武 透
せんちゃんならわかるからどれほど成長したか分かるやろ!??!
夕立 茜羅
夕立 茜羅
いやぁ...でも...私絵とかそんな分からないよ...?
それでも椅子に座ってくるくる回りながらお願いをしてくるのでページをめくっていく.

確かに絵は上達していて,上手くなっていた.


何枚目かめくった時,ある紙を見つけた.


真っ白な少女,お姉さんの部屋で見たあの絵と似てる__

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