第18話

______
10
2026/07/22 15:00 更新


「元気してた? 」

「はい。バイトに追われてます。葵月さんは? 」

「はは、そりゃ大変だ。俺はね、名字を小鳥遊に戻した。嘘じゃなくなったよ」






「日本の夏、物凄く暑いです」

「あはは、知らなかったの? 」

「よく考えたら知り尽くしていました」






「日本の食べ物が恋しいよ、俺の好きな和食屋まだある? 」

「たまに有栖川さんと行くようになりました。結構仲良くなりました。彼、酔うとちょっと面倒くさいです」

「あはは、酒入った真琴の絡み癖治ってないんだ、あいつらしいな」






「こっちは秋になりました。東京も紅葉が見れます」

「うわ、いいな。クリスマス休暇が待ち遠しい。ああでも、その頃には紅葉終わってるや」

「その頃には日本は初詣ですね。雪景色は見れますよ、東京は積もらないかもしれないですけど」






「先生は元気にしてる? 」

「はい。葵月さんに会いたがってました。金魚の皿もずっと飾ってあります」

「嬉しいよ、帰国するタイミングで顔出しに行こうかな」






「正月には姉も実家に顔を出してくるようになりました。良かったです」

「ふふ、少しずつ良くなっていくといいね」

「絵付け、誘ってくれたからです、きっと」






「日本楽しかったよ。冬でも、ロンドンより暖かい」

「和食美味しかったですよね」

「美味しすぎた。三ヶ月分くらい日本の料理向こうに送りたいよ」






「初めて出会った時のこと覚えてます? 本当は、絵のことなんて全然知らなくて。だからあれ、嘘なんです」

「あはは、真面目だな。俺も小鳥遊って名乗ったのに」

「そういえば、お互い様でしたね」






「嬉しかった。『帰雁』を見たいと言ってくれて、その感想が何も飾らない『すごかった』の一言だったのも」

「……春、来ましたか? 」

「あれを描いた時は来なかった。今はわかるよ。雨が止むことも、春が来ることも、雁がまた、戻ってくることも」










 

プリ小説オーディオドラマ