彼がいたはずの部屋には
私が彼を好きだという気持ち
ただそれだけが残っていた
LINEでも、電話でも、手紙だっていい
彼の言葉で伝えてほしかった
空気から別れを感じるなんて嫌だった
2年半も一緒にいたのに
気持ちが離れていくことが分からなかった
逆に
私は彼のなにを分かってたんだろう
彼の中での私はなんだったんだろう
俺の体は徐々に
でも確実に
なにかに壊されていった
それから1週間
病院で診察を受けた
信じたくなかった
聞こえないふりをしたかった
「脳腫瘍による頭痛は突然起きるものではありません、数ヶ月から数週間かけて強くなっていきます」
「朝方に痛みが強くなる、なんてことありませんか?」
「やはり、脳腫瘍の可能性が高そうですね」
「1度MRI検査しましょうか」
俺は話についていけなかった
なにふりかまわず話が進んでいく
MRI検査?
そんなやばいもんじゃないだろ、、、
大丈夫だろ、、、
MRI検査を終えて、また病院に行った
「脳腫瘍は全てが悪性とは限りません」
先生のこの言葉を信じた
まだあなたにも達也くんにもはるにも
何も言えずにいる
この検査で全てが決まる
「松村さん、あなたの脳腫瘍は悪性でした」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。