山田side
ラジオの収録を終えて帰ろうと車に乗り込んだ瞬間自分のスマホがブルブルと震えながらなってる事に気付いた。
山田『誰だろ?結構遅い時間なのにな…?』
今日は、かなり遅めに収録だったから今の時間は既に0時前。。。
こんな時間に誰なんだろう。なんて疑問を持ちながら運転席に座ってスマホを見る。
画面に表示されていた名前は…“伊野尾ちゃん”という文字…
あぁ。なるほど。
電話に出る前から少しだけど内容の予想がついた。
♪pururu pururu ポチッ
山田『もしもし?』
伊野尾「ごめぇん、山田ぁ…こんな遅い時間に…」
山田『大丈夫だよ。今収録終わったとこだから…』
伊野尾「あっ、そうなの??」
「遅くまでお疲れ〜」
山田『ん。ありがとう…』
『で、要件は??』
伊野尾「山田が良いのならいつもの…」
山田『いいよ?場所はいつも通りでいい?』
伊野尾「いいよ。」
山田『分かった。』
プチッ
“いつもの…”
“いつも通りの場所”
たった二言で成立する。
他人から聞いてみれば「なんのこと?」ってなるのが当たり前。。。
けど、俺らはこの二言で通じるしむしろこれ以上の会話はいらない。
山田『…さぁて、行くかっ…』
伊野尾side
♪ピンポーン
伊野尾『はぁい』
ガチャッ
山田「失礼します…」
伊野尾『いらっしゃい〜』
山田「うん」
電話をかけてから10分も経ってないかな?ぐらいで山田が来た。
俺の家のチャイムを鳴らすと『はぁい』って俺が言っただけでスっと入ってくる。
これも、もう習慣と化しているんだろう…。
別に俺がドアを開けてあげなくても返事をしたら開けていい。
そう言っておいたから最近は俺の返事を聞いたら自分で入ってくるようになった…。
山田「…」
伊野尾『先に風呂はいっていいよ?』
山田「うん、ありがとう…」
そう言い残すと鞄をソファに置いて慣れた感じで風呂場に消えた。
あ、俺もボケっとしてる場合じゃない。
山田が、風呂のドアを閉めたらバスタオルを用意しておかないといけない。
バタンッ
伊野尾『入るよー』
ガチャッ
~ザーッ~
山田「おぅ」
風呂場のある部屋のドアを開けて入るとシャワーの音が聞こえてきた。
それと同時に、山田の声が風呂場から聞こえた…
伊野尾『…タオル置いとくね、』
山田「おぅ、ありがとう」
伊野尾『ううん、じゃあ部屋に行ってる〜』
山田「寝んなよ?笑」
伊野尾『バーカ、呼んだ方が寝るかよ!笑』
バタンッ
………よし。
これで、後は山田が出てくるまで部屋でゆっくりしておこう…
ガチャッ
山田「お待たせ…伊野尾ちゃん」
伊野尾『…あ、さっぱりした?笑』
山田「うん、気持ちよかったよ…。」
伊野尾『ふふ、そりゃー良かった…』
15分ぐらいで、あがってきた山田は髪がまだ乾ききって無いからお湯と言うのか水と言うのか滴っている。
なんと言うか…色っぽい。
伊野尾『山田…』
山田「…ん。」
伊野尾『ふ…ぅん…んん…』
山田の名前を呼びながら首に手を回すと自然と山田からのキスがふってくる…
段々、触れるだけのキスから深いキスに変わっていく…
お互いに息が出来ないくらい長くて深い……
限界がきて山田の胸あたりをトントンと叩くと唇が離れて銀の糸が一本…
すかさず切れないように山田が銀の糸を自分の舌ですくってそのまま俺の唇を優しく舐める。
別に、ただのお互いの欲を満たすだけ行為をするだけなのに毎回しっかりキスまでしてくれるのが心の優しい山田らしい。
そう、俺達は別に愛を分かち合う為とかそんな理由で身体を重ねる訳ではない。
言うなれば…… “セフレ” というものだ。
けど、これはこれで紛らわしい…。
別に好きでもないやつと欲の為だけの行為にキスをしてくる山田は “本当は俺に気を持ってくれてるんじゃ…?”
なんて。
初めは、本当に欲の為だけのつもりで山田に頼んでいたがそのうち俺は本気で山田に恋をしていた……。
だから、行為中もさり気なく山田の名前も呼ぶし最後まで好きって言う。
こんな事をするのは、遠回しに好意を持ってることに気付いてほしい……なんて願いがあるから。
だったら、素直に言えよ。って言われるとそれは出来ない……
伝えてしまってもしも「ごめん。」なんて言われてこの関係さえも続かないで消えてしまうのが怖いから……
友達としてでもいい。
山田と……居たいから…
伊野尾『んぅ…』
山田「…いい?」
伊野尾『…』コクッ
「いい?」と聞かれてコクっと頷いたらそっと山田にベッドへと押し倒される。
ここから長いようで短い夜が始まる……。
山田side
山田『……ん、』
カーテンから明るい光が差してきて眩しくなって目が覚めた…。
隣を見ると髪が乱れて裸で布団を着てスヤスヤと眠る伊野尾ちゃんの姿。
よく見れば胸の部分や首筋より少し下の部分に赤く染った印が何個も散らばっている…
これは、紛れもなく昨日ヤった証拠だ。
山田『……さて、シャワー借りるかな…』
ベッドから静かに出て伊野尾ちゃんを起こさないように物音をなるべく立てずに床に落ちている自分の服を拾って静かに部屋を出る。
そのまま、シャワー室に直行してシャワーを借りたら伊野尾ちゃんが起きた後の為の朝ごはんだけ作って静かに伊野尾ちゃんの家を後にする。
止めておいた車に乗り込み少し息を吐く……。
山田『……伊野尾ちゃん…』
静かな車に俺の言葉がスっと消えていく…
軽く目を瞑って昨日の事を思い出す……。
「山田」 「好き」
伊野尾ちゃんはただのお互いの欲を満たすだけ行為をするだけなのに毎回俺の名前を最後まで呼ぶし好きだと言ってくる……それは心からの言葉では無いのは明白だけど気を使ってくれてるのかずっと名前を呼んで嘘でも好きを伝えてくれるのが心の優しい伊野尾ちゃんらしい。
だけど、俺からしてみれば勘違いをしてしまいそうになるだけだ。
別に好きでもないやつと欲の為だけの行為に俺の名前を呼んだり好きを伝えてくるのは
“本当は俺に気を持ってくれてるのかな…?”
とか。
伊野尾ちゃんがある日突然「俺……溜まってんだよね♡」なんて言うから俺も溜まってるし…なんて軽い気持ちで付き合ってあげるようになった。
けど…いつからか何だか本気で伊野尾ちゃんの事が気になり始めた…
その日から、行為前に伊野尾ちゃんに優しくキスをして『いい?』って聞くようになった。
こんな事をするのは、遠回しに好意を持ってることに気付いてほしい願いがあるから。
だったら、素直に言えよ。って言われるとそれは出来ない……
伝えてしまってもしも「ごめん。」なんて言われてこの関係さえも続かないで消えてしまうのが怖いから……
友達としてでもいい。
伊野尾ちゃんと……居たいから…
END…?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。