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第10話

「ずっと一緒にいられるっていうジンクス」
あれから、約一年半が経った。


傑先輩は一足先に有名な私立大に進学した。


私は、先輩とは違う大学に進学し、そこで心理学を専攻している。


私と同じような悩みを抱える人に、正式なカウンセリングを経て、元気になってもらいたいと思ったからだ。


あれだけ嫌いだった自分の笑顔が、今は自信を持って好きだと言える。


そうさせてくれたのは、傑先輩に他ならない。


瀬戸くんからは、「かなり表情が柔らかくなった」と言われたくらいだ。


もう、『能面女子』なんて言われないし、言わせない。
友達
あなた、この後遊びに行かない?
友達
映画とカラオケ、どっちにする?

人見知りも少しずつ克服した私は、大学に入ってから思い切って声をかけるようになった。


結果、少しずつ友達ができたのだ。


でも、今日の遊びの誘いは、断らなければならない。
あなた

ごめんね。
今日は、先約があって……


両手を合わせて謝ると、みんなの視線が私に集まる。
友達
えっ、そうなの?
友達
そういえば、『別の大学に彼氏がいる』って言ってたよね。
もしかして、デート?
友達
なになに? 相手どんな人? かっこいい?

デートだということはバレているようなので、私は照れながらも正直に答えることにした。
あなた

かっこいいだけじゃなくて、優しい人だよ

友達
ひゅ~! やる~!
友達
今度会わせてよ!

こんな風にのろける日が来るなんて、以前の私は夢にも思わなかっただろう。


ひとつからを破れば、そこに新しい世界が広がっていることを知らなかったのだ。
朝比奈 傑
朝比奈 傑
へえ、俺のこと友達にそう言ってるんだ?
あなた

ひえっ!!


背後から、急に耳元で囁かれ、私は飛び上がった。


慌てて振り返ると、声の主は、間違いなく傑先輩。
友達
は!? めちゃくちゃイケメンなんですけど!
友達
ちょっと、どういうこと!?
友達
今度話聞かせてもらうからね!

想像を絶する美形の登場に、友達はみんな大興奮。


明日の質問攻めが確定したところで、私は友達と別れ、傑先輩の運転する車に乗り込んだ。



***



今日のデートは、臨海公園。


何度か来ているけれど、天候の影響や人が並んでいたりで、観覧車にはなかなか乗れなかった。


それが今日は、運良く空いている。


ゴンドラに対面で乗り、景色を楽しみながら、私はとあるジンクスを思い出した。
あなた

頂上でキスをすると、ずっと一緒にいられるっていうジンクス、知ってます?

朝比奈 傑
朝比奈 傑
知らなかった。
なに、みんなやってるの?
あなた

それは……分かりませんけど

朝比奈 傑
朝比奈 傑
じゃあ、絶対にやる
あなた

えっ!


なんとなく言ったことなのに、先輩は意気込んでそわそわし始めた。
あなた

待ってください、心の準備が……!

朝比奈 傑
朝比奈 傑
今まで、してもいいか分からなかったから黙ってたけど、あなたから言ったなら大丈夫
あなた

違います、そんなつもりじゃなくて!

朝比奈 傑
朝比奈 傑
顔が真っ赤だけど? こっちは嫌がってないみたい

能面じゃなくなった自分の顔を今は呪いたいくらい、恥ずかしい。


頂上が近づくにつれ、先輩の圧は強くなり、私は遂に折れた。
あなた

先輩、目……閉じててください!

朝比奈 傑
朝比奈 傑
ふ、分かった

傑先輩が嬉しそうに目を閉じたのを確認して、私はえいっと前に踏み出した。


【完】