あなたの目の前で
バタバタと行き交うスタッフ。
そんなスタッフ達を眺めていると
人に酔いそうになった為、
壁に寄りかかり、
視線を下に落とし俯いていた。
1人でいるのが気まずくて、
早く猛に戻ってきて欲しかった。
そんな時、
視線を落としていたあなたの目の前に
1人の人が静かに立ち止まる。
《大丈夫ですか?》
と声を掛けられるあなた。
どこか聞き覚えのある声だった。
スタッフかと思い、
急いで視線を上げ、
壁から離れ、姿勢を正す。
視線をあげたあなたは
瞬時に色々と後悔した。
どうして
もっとトイレに
いなかったんだろう、、、
どうして
猛がトイレに行く事を
止めなかったんだろう、、、
どうして
今目の前にいる人が
私に気がついてしまうような
目立つ所にいたのだろう、、、
それと同時に
疑問も浮かんだ。
どうしてここにいるんだろう?
もしかしてまだ、、、
なんて嫌な事を考えてしまう。
クスっと笑う彼女の前で
あなたの顔は引きつっていた。
そこはあえて
紫耀から聞いたと言わないのか、
それともカマをかけてきたのか、
今の状況からは読み取れないでいた。
頭を下げてその場を去ろうとした時
そう言われ、
去ろうにも去れずにいた。
全くもって心当たりが無く、
どう答えていいか戸惑っていた。
そしてじゃあね〜と手を振りながら
スタッフが行き交う中に紛れ込んで
すぐに見えなくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。