祐奈は最後にこう言った。
それだけ言うと、
また後でね〜!と手を振りながら
ステージの裏へと消えていった。
何でこんな時に限って
紫耀はいないの?
何でこんな思いまでして
この業界にいなくちゃいけないの?
一般人になれば
この苦しみから解放されるの?
そんな事ない。
紫耀と付き合っている以上
こういう事がずっと続く、、、
歌う事をやめたいわけではない。
紫耀が悪いわけじゃない。
紫耀の事が嫌いだからではない。
ただ自分が弱いだけ。
間違いだと言い聞かせる自分と
もしかしたら本当なのかと
思ってしまっている自分がいる。
自分に自信があるなら、
こんなに不安にならないのに、、、
でも特別可愛いわけでもなく
特別魅力があるわけでもない。
自分より可愛い子が
この業界には沢山いる。
でも、、、
歌うことは、
自分にとって
唯一自信を持って出来る事だから、、、
ベースを握りしめる手に
一段と力が入った。
猛を待たずに楽屋に戻り
水を勢いよく飲み始める。
そしてイヤホンをつけ、
無心になってベースを弾き続けた、、、
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!