そう言って屋上から
出て行こうとした颯斗を
猛がとめた。
すると颯斗は
あなたが座らされていた所に
自ら座った。
颯斗から聞かされた
衝撃の事実に
驚きを隠せないのは
響だけではなかった。
紫耀は自分がはおっていたシャツを
颯斗に渡した。
颯斗はペコっと
紫耀に頭を下げ歩き出す。
少し歩いたところで
急に何かを思い出したように
ピタっと止まり振り返った。
そして自分の頬を指差して、
あなたに言った。
颯斗は片手をあげると
屋上から出て行った。
猛と響が目の前のあなたを
質問攻めにしているのを見て、
紫耀が止めに入った。
颯斗から借りた制服をきちんと着て
ボタンをとめる。
その手首には
先程縛られていた痕が
アザとなって残っていた。
その様子を見ていた3人が
気づかないわけがない。
もちろん3人とも気づいていた。
そして足首に目を向けると
同じようにアザになっていた。
膝はすりむいて血が滲んでいる。
あなた本人は
平気そうにしているが、
見ているこっちが
痛々しかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!