その時不意に聞こえてくる声。
ドアに目を向けると
紫耀のシルエットが
見えていた。
ドアの向こう側で
紫耀の笑う声が聞こえてきた。
そう聞かれ、
海人の笑顔が浮かんできた。
紫耀に言ってしまえば
海人を止められるかもしれない。
だけど、
いくら不倫でも
人の幸せを崩すような事を
してもいいのかと
ためらってしまう自分がいた。
苦しい言い訳だった。
もちろん紫耀に
こんな嘘が通用しないことぐらい
わかっていた。
わかってはいたが、
そう言うしか
他に良い方法が
みつからなかった。
紫耀のシルエットが
見えなくなるのを確認した。
出てから紫耀に
何て言おう、、、と
身体を洗いながら考えていた。
ーーーーー紫耀side
バスルームを出たところで
バッタリと海人に会う。
帰って早々紫耀に
そんな事を聞かれると
思っていなかった海人。
とりあえずそう聞いてみた。
海人に背を向けて
自分の部屋へと向かう紫耀。
そう呟きながら
部屋に入っていく紫耀の姿を
海人は静かに見送った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!