廉が昨日の夜、
珍しく朝から出かけたいと言ってきた。
それだけですら珍しいのに、
こんな質問をしてくるなんて、、、
そして連れて来られたのは
前から行きたいと言っていた水族館。
お互いなかなか
予定が合わないのもあったが、
何より2人ともインドア派な為
デートというデートをする機会が
滅多にない。
相変わらず冷たい
塩対応な感じがするが、
する事は可愛くって、、、
今だってほら、
手を差し伸べてくれている。
それが嬉しくて、
1人でニヤニヤしながら
その手を握ると、
と言いながら鼻で笑われた。
そう言って
私が離そうとする手を離さないように
ギュッと力を入れて握ってくれる。
とボソッと言いながら
口元を隠す細い手。
照れてる廉を見るのが好きで
たまに廉ちゃんって呼ぶと
いつも期待通りの反応をしてくれる。
そして水族館の中をゆっくり周り、
ヒトデを触ったり、
イルカショーを見たりと、
本当によく1日遊んだ。
気づけば外は真っ暗で、、、
最後に水族館の外にある
イルミネーションを見て
帰る事にした。
さっきから空返事しかしない
廉の顔を覗き込んだ。
するとたった2文字の言葉と共に
渡された小さな袋。
急に差し出されて驚いていると、
と袋をポケットにしまおうとする廉。
それを奪うようにして受け取ると、
それが面白かったのか、
声を出して笑っていた。
さっき売店で眺めていた
イルカのキーホルダー。
赤と青の2匹入っていた。
本当に素直じゃないなぁ、、
なぁーんて口に出しては言えないけど、
不器用なりに
私が喜ぶだろうと思って選んで
そしておそろいにまでしてくれた事が
心から嬉しかった。
イルカのキーホルダーを見つめて
喜んでいると、
廉が真面目なトーンで
と私の名前を呼んできた。
よく聞いてと言われた為黙っていたが、
なかなか何も言ってくれない。
何だろう?と思っていると
パッと急に抱きしめられた。
何が何だかわからなくて、
そのまま身体を預けるように
抱きしめられる。
すると抱きしめられたまま、廉が言った。
え、、今何て、、?
顔を上げようとすると
と抱きしめる力を強めてくる。
そう言いながらも
今度は目を見て言ってくれた。
もちろん答えは「はい」に決まってる。
ーーーーーENDーーーーー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。