少ししてタクシーが出発した。
タクシーを視線で追う海人。
そしてタクシーがウインカーを出し、
曲がって見えなくなるまで
見届けた。
俺が視線を戻した時、
ピタッと目が合った、、、
その相手は、、、
視線の先にいた彼女。
最初、彼女も
驚いた表紙を見せたが
すぐにニコッと笑い、
優しく手を振ってくれた。
そしてすぐそばの歩行者用信号が
青になったのに気がつき、
俺は慌てて走り出した。
息を切らして彼女の元へと向かう。
あの頃と変わらず
優しく微笑む彼女。
口元に手を当てて
クスッと笑う仕草は
俺をあの頃に引き戻していった。
愛ちゃんこそ、、、
あの頃みたいに優しくて、
あの頃みたいに落ち着かせてくれる。
あの頃みたいに泣いていなくて、
あの頃みたいに笑ってる。
忘れた事は無かったから。
1日だって
忘れた事はない。
毎日毎日
今度会ったらあれを言おう、
今度会ったらこれを言おうと
考えて考えて考えて、、、
だけど、いざ彼女の存在を
目の前にすると
全く言えなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。