歩いていると
急に廉が立ち止まった。
廉の指差す先を見ると、
様々な色で光る観覧車が。
あなたが観覧車に見とれていると
廉が質問をしてきた。
廉はあなたの手を取ると
急に走り出す。
あなたは廉に
ついて行くのに必死だった。
綺麗な観覧車を見るより、
観覧車を下から見上げる
廉の横顔を見ていると、
廉と目が合う。
廉は普通にあなたの手を取ると
観覧車に先に乗せてくれた。
そして後から廉も
乗り込んでくる。
係員さんが扉を閉め、
夜の空中散歩が始まった。
窓にしがみつきながら
はしゃぐ廉は
少年のようだった。
そんな廉を見ていると、
自然と笑顔になっていた。
海人にも廉と同じ事を
言われたのを思い出す。
2人に言われなきゃ
気づかないほど
最近笑ってなかったのかな、、私。
向かい側に座る廉の瞳は
真っ直ぐあなたをとらえていた。
見透かされそうで
思わず目をそらしてしまう。
黙ってうなずく。
すると廉が
大きくため息をついた。
あなたは首を横に振る。
涙を見られたくなくて、
窓の外に視線をうつす。
皮肉にもそこには
カップル達が手を繋いで
楽しそうにしている姿が見えた。
綺麗なはずの景色が
涙でどんどん歪んで見えてくる。
抑えられない想いが
溢れ出していった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。