向かい側に座る紫耀が
あなたの手を取り、
急に自分の方へと引っ張った。
グラっと揺れる観覧車の中で、
揺れに身体を取られる。
紫耀に支えられ、
紫耀の膝の上に座らされた。
そこには夕日が反射し
キラキラとオレンジ色に光る
海が見えていた。
背中から伝わる
紫耀のぬくもり。
今だからこそ、
言ってみようと思えた。
紫耀に背を向けて
座っているあなたは、
頷く事もせず、
ただ目の前に広がる海を見ていた。
紫耀があなたの事を
抱きしめる腕に
力が入る。
その言葉に
ピクっと反応するあなた。
そして縦に一度
うなずいた。
あなたを抱きしめる
あなたの前にある紫耀の手に、
ポタポタと温かい雫が
降り注ぐ。
一雫、、二雫、、
紫耀の手に染み込んでいく。
あなたは首を横に振る。
あなたの前で組まれていた
紫耀の手がほどかれる。
紫耀があなたのアゴを持ち、
後ろに向かせる。
紫耀があなたにキスをする頃、
そこはちょうど
観覧車の頂上だった。
あなたの涙が反射し
オレンジ色に光る。
目の前に広がる海の色と同じ。
どうしたら良いか、
自分がどうしたいのか、
あなたは自分の中で
答えを探し続けていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!