紫耀は決めていた。
祐奈を送り届けてから
今日こそちゃんと
あなたと話そうと、、、。
廉が途中で雑誌の取材で抜けた為、
今日はいつもより早く終わっていた。
祐奈は紫耀の腕を組んで、
ルンルンでタクシーまで向かう。
タクシーの中では
祐奈が喋る一方で、
紫耀はほとんど無言だった。
助手席に乗っていた紫耀は
渋々降りた。
祐奈が駅へ行って
タクシーに乗り込もうとした時
紫耀は見てしまった。
紫耀が見たのは
あなたが廉の腕を引っ張りながら
歩いて行っているところだった。
紫耀はここまでのタクシー料金を
急いで払い、
あなたと廉を追いかける。
やっと追いついて、
あなたの肩を掴んだ。
ビクッとなり、
咄嗟に廉の後ろに隠れるあなた。
あなたの方をチラッと見るが、
あなたは廉の後ろに隠れたまま
腕をギュッと掴んでいた。
紫耀が言おうとしていた事を
さえぎるかのように
紫耀の名前を呼んだ。
あなたの、廉の腕を掴む力が
より一層強くなる。
紫耀があなたの腕を
つかもうとすると、
パシッ、、っとはじかれた。
ようやく目が合ったと思ったら
目には涙が溢れていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。