あなたは海人がくれた
《いちごみるく》の包みを開け
パクっと食べた。
あなたは腫れた頬を指さしながら
《ここ、ここ》と海人に言った。
海人から無理矢理、
保冷剤を渡されると
あなたはそれをしぶしぶ
左の頬にあてた。
そんなあなたの両手を見て
海人は思った。
あなたの傷だらけの右手を持ち上げ、
海人の両手で優しく包む。
自分より細くて小さいその手は
今にも壊れてしまいそうなほど
か弱くみえた。
あなたを真っ直ぐ見つめる海人。
そんな海人を
見つめ返すあなた。
伝えたい事が沢山あるのに
上手く言葉にならない
もどかしさ。
話そうとすれば
思い出してしまう
あの恐怖の時間。
あなたの心の中と頭の中は
いろんな感情が
溢れかえっていた。
瞬きをするのを忘れるぐらい
ビックリして海人を見てたあなた。
そしてそんなところも
すかさず突っ込んでくる海人。
それがまた
海人らしかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。