こんなときにまで、冗談言うなんて...!
山田が来てくれたおかげなのか
冷えきった私の心が、じんわりと暖かくなるような安心感が生まれた。
落ち込んでいる様子を悟られないように
笑いながら話したけど
やっぱり辛い。
止めようと思っても涙がこぼれてしまう。
いきなり謝ってきた山田に驚いて、再び顔を上げた。
どういうこと、
なんで、そんな勝手なことっ...
すると少しだけ間が空いたと思うと
グイッ
なんで...
訳も分からぬまま
山田の腕の中に閉じ込められてる私。
図星を突かれて何も言えなくなった私を見て
山田の腕の力が、少し強くなった。
すると一旦私の体を離して、深呼吸をした山田。
驚いたと共に
その真っ直ぐな視線は、私を釘付けにした。
なんで気づかなかったんだろう...
一番隣で私のことを見てくれている人がいたのに
自分のことばっかりで、何も気づかなかった。
あの夏祭りのときも今もそう、いつも私を助けに来てくれた。
山田の気持ちを考えたらまた涙が溢れてきて。
涙でぐちゃぐちゃな顔で山田に伝えると
ふふっと笑って
なんで、こんなに優しいの...
今までみたいに冗談言って笑わせてよ。
だけど...
大切な人がこんなに近くにいるなんて思ってもいなかった。
私ずっとついて行ってもいいのかな?
すると
私達を包み込むようにライトアップされたクリスマスツリーは今まで見た中で一番美しく輝いていた。
その雰囲気に溶け込まれるように
山田と視線を交わし、唇が触れ合う。
24日、クリスマスツリーの前で
新しい恋を始める___________
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。