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第1話

一目惚れ
1話目
『一目惚れだった。』

少し黄色がかった、風でたなびくその髪も、

低く、落ち着くその声も、

自分よりも大きなその暖かな手も、

眩しいくらいのその笑顔も、

全部、全部、鮮明に覚えている。

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文化祭

辺りは燃え上がるような昼下がり。何処を見ても人、人、人。高校で

やるにしては、あまりにも手の込んだお化け屋敷や、明らかに暇そう

な警備員。そんな中、その空気に呑まれそうになる自分がいた。  

こんな所に行く気は無かった。兄に誘われても断るつもりだった。は

ずなのに。きっと、想像上では文化祭というのは、キラキラ輝いて見

えて、準備も当日も楽しい1年の大イベントなのだろう。でも、現実

はそんな事はなかった。通り過ぎる人々は歩き疲れて、準備なんか面

倒くさくて、片付けなんて生徒達は疲れきっていて出来ないだろう。

楽しいのなんてほんの一瞬だけ。一瞬だけだ。そんなくだらない事を

考えていると急に目眩がした。夏バテだろうか。体力が無いのは分か

っていたが、自分はこんなにも弱いのかと驚いた。

「…うぅ…」

せめて人気の無い場所を目指し足を動かそうとするが、酷い頭痛で立

ち上がれない。ズキズキと脳の奥から全身に響く様な痛みで吐き気が

した。通り過ぎる人達がまるで僕を段々壊していくような、そんな幻

が見える。あぁ、早く帰りたいな。無理か。まず立ち上がれないもん

な。何処かの誰かが助けてくれないかな。

「大丈夫?」

意識は朦朧としていて、前を見るのが精一杯。そんな、僕の目に映っ

たのは、キラキラと輝く僕には勿体ないくらいの笑顔と、僕を見つめ

る、真っ直ぐな目だった。思い込みかもしれない。これこそ、幻かも

しれない。幻でも良い。一瞬、時間が止まった様な気がした。そっか

今が僕にとっての"ほんの一瞬"なんだ。さっきまでの痛みや疲労は嘘

みたいに無くなって、目に映るもの全てが輝いて見える。そんな言葉

が、きっとあっている。胸が高鳴って、ずっとこの時間が続けば良い

のになんて、思ってしまう。周りなんて見えない。"この人"の声しか

聞こえない。"この人"に夢中な自分がいる。さっきまでの暑さとは違

う、体の奥から熱くなっている。知りたい。もっと。知りたい。せめ

て、

「名前ッ!!!」

「…教えてください……」

想像以上に大きな声が出た。自分でもびっくりした。恥ずかしくなっ

て何も言えないでいると、

「凪羽…」

「……凪羽 湊…俺の名前。」

ニカッと笑ったその顔は反則でしょ、なんて思いながら僕は、

『恋』に落ちた。