第20話

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2020/09/27 09:51
倉木(なまえ)
倉木あなた
……ゲッ
なんとなく、覚悟はしてた。


けど、
倉木(なまえ)
倉木あなた
う〜、行きたくない〜
倉庫らしき建物の前には、大量のバイク。


そして髪の毛のカラフルな人達が、いわゆるヤンキー座りで溜まっている。






「おいっ!てめぇ、何ジロジロ見てんだよ!」





しかも、そう言って、1人のヤンキーが目の前に座るヤンキーにイカつい顔面で突っかかっている……。


のを、建物の陰で見ている私。





「別に見てねぇよ!!やんのかコラ」





……ケンカ、始まっちゃうのかな。


はぁ……。




「ぶっ殺すぞゴラァ」




案の定、倉庫の前でケンカが始まった。


誰も加勢しないから、多分2人ともここのRAMPAGEって暴走族の人なんだろうなぁ……。


てかいいの?樹。


キミの仲間たち、仲間割れしてるよ?


そんでもって入るタイミングを完璧に逃しちゃったよ!!


その時、
川村壱馬
川村壱馬
お前ら、何やってんの。樹にバレたら怒られるよ、はい、やめやめ!



「か、壱馬さん!」

「すいやせん、えっとこれは……」





ケンカの仲裁に入ったのは、壱馬だった。


っていうか壱馬すごいな……。


あの不良たち抑えちゃうんだ。


めっちゃ敬われてるし!!


けど、私からしたら転校初日にみた壱馬が忘れられないけどね……。


……あの、例のスキンヘッドを吹っ飛ばした奴。


壱馬は喧嘩していた2人にニコニコと接しながら、肩をポンポンとして倉庫の中に戻ってく。


ん……?


もしかして今チャンスなんじゃ?


ここで壱馬に声かけないと、私たぶん一生樹のところに行けない!
倉木(なまえ)
倉木あなた
あっ、かず……



「何してんだてめぇ」




壱馬、と彼の名前を呼ぼうとした時、誰かに遮られた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっ……
ケンカに気を取られていて、建物の陰からかなり体が出ていたらしい。


一瞬にしてヤンキー5人に囲まれた。


って!!


さっきケンカしてた2人もいる!!


この人たちRAMPAGEだよね?


なんか怖いんですけど……。





「何してんだって聞いてんだよ」





怖い怖い怖い!!


そのツンツンに立った金髪で身長が上増しされているせいか、デカく感じる。
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっとあの、私……


「早く言えよ!!」




だから今、言おうとしたじゃん?


話を聞け短気野郎……。





「翔吾さん、コイツどうします?」





そのヤンキーは、自分の身長より20センチは低い可愛らしい幼い顔立ちをした男の子に声をかける。


てか、え?


この男の子の方がお偉いさんなの?


どう見ても小学生……。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
チビとか思ってたら殺すよ、キミ
チビとは思ってないよ!!


小学生……って思っただけ!!


という意味を込めて、私は首を横にブンブンと振った。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
ふ〜ん、お前は俺と同じくらいの身長だしな、チビとは言えないよな〜
なんだコイツ。


しかも私の方が絶対に高いよ。2センチくらい!!


大事な2センチを、同じくらい、なんていわないでほしいかな!


……けど、コイツは偉いんだよね?
岩谷翔吾
岩谷翔吾
まぁ身長のことはいいや……で、キミ。俺たちの倉庫になんの用?
あっ……。


やっぱりコイツ、人の上に立つ人間だ。


雰囲気が、もう真っ黒というか。


重いというか。


そんなオーラを出している。


こんな状況で睨んだ顔が少しかわいいと言ったら、絶対に殺される……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
いや、私、樹に……
岩谷翔吾
岩谷翔吾
はぁ!?樹さんに!?お前、今すぐ首吊って死ね!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
は?
何このチビ!!


樹に……って言っただけじゃん!!


なんで死ななきゃなんないの!?


死ねしか言えないなんてガキだ!


お子ちゃまだ!小学生だ!!





「翔吾さん……。コイツ、総長のただの追っかけかもしんないっすよ。彼女じゃないですって」



岩谷翔吾
岩谷翔吾
そんなんわかってるし!こんなちんちくりんが樹さんの彼女なわけないだろ!!
は……?ちんちくりん?





「そうっすよ〜、顔面偏差値は、今まで倉庫に来た女の中でダントツにビリですよ〜」






は?


何つったコイツ。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
だよなぁ〜
黙れ小学生。


しかも顔面偏差値って……。


なに北人と同じこと言ってんの。






「で?お前なんの用だよ。顔面偏差値52!!」






ふざけんな金髪ッ!!


52とかなんでそんな半端なのか。そして、なんで北人の評価より8も低いの!!許さない!!
岩谷翔吾
岩谷翔吾
うわぁ、顔面偏差値かなり低くされたゃったな〜。樹さんを追っかけてるからだよ?
翔吾はフッと笑う。


申し訳ないけどね!!


あんたたちの頭の偏差値の方が低いわ!!


絶対!!


統一模試でも受けてこい!!


とくに、そこの小学生!!


腹立つけど、早くジャガイモを用意しなければ。
倉木(なまえ)
倉木あなた
樹の彼女でも追っかけでもないから。樹は倉庫にいるの?倉庫に入ってもいい?それか呼んできて
岩谷翔吾
岩谷翔吾
はぁ!?
翔吾は目を見開いて、私をありえない、とでも言いたそうに見ている。


う〜ん……。


こっちも好きで樹を訪ねてるわけじゃ……あ。
倉木(なまえ)
倉木あなた
だったら伝言を頼んでいいかな?伝えてくれるなら帰るから
最初からそうすれば良かったんだ〜。


私バカだ。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
内容によるけどな!!なんだよ?
な〜んかコイツ、翔平に似てるな。


上から目線だし。


でも、翔平の方がかわいげあるかな?


いや髪の毛は翔平の方がイカついけど。
倉木(なまえ)
倉木あなた
ジャガイモ
岩谷翔吾
岩谷翔吾
は?ジャガ……?
倉木(なまえ)
倉木あなた
樹にジャガイモ買ってこいって言っといて
倉木(なまえ)
倉木あなた
よろしく
岩谷翔吾
岩谷翔吾
ちょっと待てよ、お前!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっ?もしかして伝えてくれないとか言わないよね?
岩谷翔吾
岩谷翔吾
伝える伝えない以前になんでジャガイモ……
は?


頭悪いな。


やっぱり私の顔面偏差値より、キミの頭の偏差値の方が低いんじゃないの?
倉木(なまえ)
倉木あなた
ジャガイモが必要だからに決まってるでしょ!!
そう叫んだ時、
浦川翔平
浦川翔平
翔吾!!どうしたんだ!?
聞き覚えのある、ヤンチャな声が……。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
あ、翔平さん!!
だよね、やっぱりね〜。


まぁ私からしても救世主……。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
翔平さん!なんか樹さんの追っかけみたいな女がジャガイモなんです!!
んなわけあるか!!


私がジャガイモだと!?
浦川翔平
浦川翔平
はぁ?ジャガイモが樹を追っかけてる?
ダメだ……。


翔平ダメだわ……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
違うよ翔平!!私だよ、あなただよ
浦川翔平
浦川翔平
あなたじゃねぇか!!なんでいるんだ?
岩谷翔吾
岩谷翔吾
え……?翔平さん、もしかして……このジャガイモ女と知り合い……?
コイツが?


俺たちの誇れる幹部の知り合い?


とでも言いたげな顔だ。


おまけに私を指でさしながら。


人に指向けちゃダメだって教えられなかった?


そんな翔吾を気にせず、翔平は私の背中をバシバシと叩いた。
浦川翔平
浦川翔平
おうよ〜!あなたは俺のダチだ!!同じクラスなんだよ!!マジで良い奴だからな〜。地味だけど
倉木(なまえ)
倉木あなた
翔平……
痛い、背中が。


そして、私は地味じゃない!!
岩谷翔吾
岩谷翔吾
なっ!?そんなわけ……
浦川翔平
浦川翔平
ほんとだよな、あなた?
倉木(なまえ)
倉木あなた
まぁ……友達で同じクラスってことだけは本当かな
浦川翔平
浦川翔平
だよな、あなた!俺たちは仲良しこよしだよな!
倉木(なまえ)
倉木あなた
え、それは否定したい
翔平が私を睨む……んだけど、すぐに子犬みたいな目をされた。


えー、私が悪いの?
岩谷翔吾
岩谷翔吾
じゃあコイツが樹さん……総長への言伝を頼んだ上に呼び捨てにしてたのは……
浦川翔平
浦川翔平
あっ、あなた、もしかして樹に用事だったのか?俺に連絡しろよ〜!!
翔平は私の頭をわしゃわしゃとした。


いやいや?


私翔平のメアドや電話番号なんて……。
浦川翔平
浦川翔平
俺、この前、入れておいたからさ〜!
倉木(なまえ)
倉木あなた
は?
入れておいた?


私の携帯に?


翔平のメアドを?


私は、すぐさま携帯を開き、連絡先一覧を見る。


そこには【ショーへー】とカタカナで書かれたメアドと電話番号が登録されていた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
なんでまた勝手に……
いつ登録したのか、まったく見当もつかない。


そもそも、年頃の女の子の携帯を勝手に開くなんてどうかしてる!
浦川翔平
浦川翔平
しっかし使いにくかったな〜。ガラケーなんていつの時代だよ〜
全国のガラケー使用者に謝れ。


ガラケーはいいよ!?


画面も割れないし、文字も打ちやすいし!!


THE・携帯って感じがするでしょ!?
浦川翔平
浦川翔平
で、樹に用なんだっけ?倉庫の中で遊んでるから入ってけよ
岩谷翔吾
岩谷翔吾
ちょっと待って下さいよ翔平さん!!そんな得体のしれない女、倉庫に入れるなんて
浦川翔平
浦川翔平
あぁん?翔吾、お前……今なんつった?
翔平は翔吾に掴みかかった。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
……うっ
浦川翔平
浦川翔平
なんつった?って聞いてんだよ
待て待て待て?
倉木(なまえ)
倉木あなた
な〜にやってんの!!バカ翔平。暴力禁止ッ!
私は、翔平の頭をペシッと叩いた。
浦川翔平
浦川翔平
何すんだよあなた!!お前、超バカにされたんだぞ!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
翔吾の言ってることは正しいから。疑うことは大事だよ。今まで樹の彼女が超美形だったなら、なおさら
岩谷翔吾
岩谷翔吾
別に俺は……
倉木(なまえ)
倉木あなた
ほらほら、私は樹に用があるの。倉庫に入れたくないなら伝言してくれる?
翔吾はうつむきながら、首を横に振った。
岩谷翔吾
岩谷翔吾
……いいよ。お前、倉庫に入れよ。……ジャガイモも頼んだら早く出てこいよ
どこまでも小学生だな。


ちっちゃいし、なんでそんなに強気なのか。
倉木(なまえ)
倉木あなた
翔吾、ありがと。すぐに出てきてあげるから
ふんっと私は翔吾に背を向けると、倉庫へ歩き出した。


その時、
岩谷翔吾
岩谷翔吾
俺、言っとくけど中3だから。背はちっせぇけど。来年には高校生だから。お前、俺の事どうせ小学生とか思ってるんだろうから言っておくけどな
翔吾の憎たらしい声が聞こえた。


私はゆっくり振り向くと、その声に返した。
倉木(なまえ)
倉木あなた
来年、でしょ。なってから高校生って言いなさい。ガキ
岩谷翔吾
岩谷翔吾
は!?クソあなた!!
なんで呼び捨てにしてんの!?


ったく、年下のくせに。


けど、ヤンキーなのに、なかなかかわいいと思ったのも事実だったりする。

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