樹side
あ〜、ダメだ。
ガマンできない。
だって、あんなに足を出して、俺が入ってくるってわかってなかったとしてもやめて欲しいっていうか!!
無茶を言ったってことくらいわかってる。
俺は彼氏でもなければ、もしかしたら友達の枠にも入れないかもしれない。
ただの同居人なんだ。
RAMPAGEは好きって言われたけど、
俺が好きって言われたわけじゃない。
あ〜なんでこんなにクヨクヨしてんだ俺。
情けねぇ。
アイツがまだついてこない後ろを振り向きながら、俺はリビングに向かった。
あなたはしばらくして下りてきた。
2人でいつも通り横並びで座る。
……が、なんか距離を感じる……。
さっきので警戒されてる?
そっとあなたの顔を覗くと、
顔を真っ赤にしてプイッと顔を背けられた。
すると、母さんが俺たちの向かいの席について、真面目な顔をした。
絶対に最後の一言だろ、行く理由。
ただ2週間ってことは……。
あなたと……2人っきりってことか?
あなたは……それでいいのだろうか。
チラッとあなたを見るけど、驚いているだけでそこから何も変化がない。
コイツ、俺と2人きりって気づいてない?
お前はそっちの心配かよ?
大丈夫なのか?
俺と2人きり大丈夫なのかよ!?
……まったく意識されていないってことか。
母さんはポンッと思い出したように手を叩くと、にこーっと笑った。
わざと、2人きりを強調しやがって。
あっと声を上げてその事態に気づいたあなたは、キリッと俺を睨みつけてきた。
あなただって一応……女子だし。
好きでもない奴と2人なんてイヤに決まってるよな。
これは、喜んでいいのか……?
いや、ダメだな。
男に見られていないってことだ。
……は?
買い物?
そういえば、1週間分の買い物するとかなんとか言っていた気がする。
まさかここで使うとは。
意気込むあなたを、横目に、
俺は大きく息をついた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。