それからというもの……。
RAMPAGEの4人が泊まりに来ようと来なかろうと、私と樹は一緒に登校するようになった。
今まで遅くに起きて毎日遅刻していた樹の心境に、どんな変化が起きたのか謎。
というか、今まで同じ所に住みながら、まったく顔を合わせていなかったのがおかしかったんだ。
私は自分のベッドに座って体をバウンドさせていた。
無駄に広い部屋。
殺風景だな……。
なんか置こうかな。
ぼーっと考えていると、バンッという音とともにドアが盛大に開く。
いつもこれ。
一応これでも女だよ?
着替えてたらどうすんの?
正論のようで正論じゃないし……。
樹の家でも私の部屋なんだから……。
わざわざ言わなくても、朝起きて樹がいなかったら気づくって。
それに、毎朝たまたま同じ時間に家を出てるから一緒に登校してるだけであって、特別に約束なんてしてないし……。
勝手に行けばいいのに……。
樹の意味のわからない言動に首をかしげるけど、まぁいいか……。
私も?朝早く行くの?
……なんで?
樹、いつも私に合わせてたの?
なんで?
そんなに1人で登校したくなかったわけ?
今まで翔平と仲が良かったけど、らそれはお昼ご飯を一緒に食べたり教室で話したりするくらいだった。
まぁ、何より翔平は恋人というよりお友達になりたい感じなんだろうけど。
樹は違う。
樹は総長なのだ。
こんな奴でも総長なのだ。
こんな俺様で自己中で性格が悪くても総長なのだ。
……女子から嫉妬がないわけがない。
まだ呼び出しリンチがないだけマシだと思う。
靴の中に画びょうとか、ノートにめっちゃ落書きされるとかたまにあるし。
けど、確かに彼女たちの気持ちも分かってしまう。
樹の彼女でもない私が、毎日隣を歩いて登校してるんだもん。
そりゃ、なんでだろうってなるよね。
結構、聞こえるように悪口言われたりとかわ、明らかにわざと足を引っ掛けられたりもしてるけど。
樹にバレないうにしてるのか?
……うまいな。
語尾がちょっとにごった。
口を尖らせている。
……子どもか。
私はベッドから立ち上がると、ドアのそばにいる樹の方へ歩き出す。
そして、樹の目の前に立つと、
樹のおでこに思いっきりデコピンをした。
あ、やっぱり否定しないんだ。
このナルシスト……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!