樹side
翔吾の声がする。
俺に客?
誰だよ、めんどくさい。
そういうのは全部、壱馬の担当だ。
はぁ?
女?
最近は、面白い奴が増えたからな……あの女で十分だ。
今日もこの後家で幹部で集まるが……。
アイツも加わらせてやろう。
無理矢理。
「えっ、総長。女に興味ないなんて……もしかしてあっちに興味が……いでっ」
俺は目の前にいた奴を軽く叩いた。
アホか。
男になんてさらに興味ねぇよ。
「えっでも、女に興味ないって」
「えっ?総長、ババの場所わかってるんですか!?」
……そう、今はトランプでババ抜き中。
だから、忙しい。
無理、女なら帰れ。
それか北人に相手してもらえ。
はぁ!?
まじかよ。
何ちゃっかりメアドなんか預かってんだよ。
めんどくせぇ。
マジで今間に合ってるから。
なんだその、絶対って。
不思議?
俺はババ抜きの途中だったが、翔吾に向き直った。
俺の口からマヌケな声が出る。
だって仕方ねぇじゃん。
ジャガイモってなんだよ。
なぜか謝る翔吾。
ジャガイモ……じゃが……。
あっ!!
俺の中には1人の候補が浮かんだ。
あとはその女と、そいつの特徴が一致すれば……。
真っ黒な髪。
黒いエプロン。
俺はトランプを放り出して立ち上がる。
「え?え?知り合いですか?」
俺はその紙を持って、駆け足で倉庫を出た。
メアドの書かれた紙にはご丁寧に電話番号も書いてあった。
その下には伝言をしなかった時のためか、しつこいくらいにジャガイモと書かれていて、
【遅くならないように】
とも書かれていた。
俺はその紙に書かれている電話番号に急いでかける。
プルルルルルと、なる無機質な音。
少しイライラしていた。
なんでアイツ、黙って倉庫に来たんだよ。
なんで名前を言ってこれのとこに来てくれないんだよ。
俺の呟きは、誰にも聞こえていない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!