触れるだけのキスをしたあと、私たちはようやく灯りをつけ、2人でベッドに腰掛けていた。
なんだかんだ私も樹も言っていない言葉。
私が、先に言っちゃうからね。
大好き。
マジか……彼女になってもゴリラとか言うの!?
でも、やっぱり楽しい。
恋人になっても、私たちはあまり変わらないね。
付き合いたてのカップルって、もっとイチャコラするもんだと思ってたけど、こういうのもいいかなって思う。
樹の声に振り向いた瞬間、
チュッと音を立てたキスが返ってきた。
ふぅむ。
それなって言うとキスか……。
それなら……。
ふふふ、さっそく『それな』って言ったよ?
そう言って笑ってやると、顔を真っ赤にしている樹。
あれ……?
つまり私は今、キスねだっちゃったわけ!?
気づいて真っ赤になる私を見て、樹も笑った。
樹はそう言うと、私にまた触れるだけのキスをした。
私、本当は樹に言わないつもりのことがあった。
けど、その時はまだこの気持ちに気づいてなくて。
それが、ヤンキーのせいだってこと。
それが理由で嫌いだってこと。
言わなくちゃ。
私がそう言うと、樹は目を見開いた。
けどそれと同時に、やっぱりそういう理由があったんだな、と視線を落とした。
少し、お母さんのことを思い出した。
1粒、また1粒と涙が落ちる。
それに気づいた樹は、指でそっと私の涙をすくうと、そのまま私を抱きしめた。
樹のその言葉が、
私を、ものすごく安心させた。
樹は私を、守ってくれる。
大切なものも、全部全部。
だけどそれじゃ、私の大切なものはすべては守れない。
何も、できないけど。
樹脳での中はあたたかくて、心地よくて。
ずっとこのままでいたい。
心の底から、そう思った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。