第23話

大魔王と対談
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2020/09/30 10:02
そんなこんなで精一杯作った大量のカレー。
藤原涼子
藤原涼子
あなたちゃん、ご飯が炊けるまでお風呂はいってきていいわよ〜。多分樹の友達も泊まってくし、混む前に、ね?
そう言った涼子さんに甘えて、私はお風呂に入ることにした。


湯船にそっとつかると、一日の疲れが取れる。
倉木(なまえ)
倉木あなた
今日も色々あったなぁ〜
ここに来てから、1番濃い1日だった気がする。
倉木(なまえ)
倉木あなた
なんだかんだ暴走族の倉庫も見られたし。今後なさそうな体験をしたなぁ
ヤンキーは嫌いだし、関わりたくないけど、なんか貴重な体験をした。
倉木(なまえ)
倉木あなた
暴走族、か……
今日、初めて見た、たまり場。


大嫌いで関わりたくもなかったヤンキーに囲まれてイヤだった。


でも壱馬や翔平や、帰り際に樹が来てくれた時、ホッとしたのはなんでだろう。


安心するのなんて、なんかの間違いだ……。


その時、


『お邪魔しま〜すっ』


『あっ、涼子さん、これつまらない物ですが』


『お腹すいたな〜』


玄関の方からみんなの声がした。
倉木(なまえ)
倉木あなた
もう来たのか〜。私も早く上がっちゃおう
倉木(なまえ)
倉木あなた
というか、みんな泊まるんだっけ?どこで寝るのかな?
やっぱリビング?


樹の部屋?


雑魚寝ってヤツかな?


うわぁ、飲み会後のおっさんみたいな光景が見られちゃうんじゃない?
倉木(なまえ)
倉木あなた
……私は、何をしようかな
今思えば、こんなに早くお風呂とかも終えちゃったわけで、夜は暇だ。


もちろん寝ることも好きだけど、早く寝ることなんてできないし。
倉木(なまえ)
倉木あなた
あの学校でテスト勉強が必要なのかも分からないから、勉強もやる気が出ないなぁー
私ははぁ、とため息を着くと、水色のルームウェアを着て、リビングへと向かった。


ガチャッ。


リビングのドアを開けると、カレーのいい匂いと、
長谷川慎
長谷川慎
北人、スプーンだせ
浦川翔平
浦川翔平
おい!!樹の方が肉多いぞ!!
藤原樹
藤原樹
俺んちだから文句を言うな、翔平
騒がしい5人が。
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、お風呂上がったんだ
倉木(なまえ)
倉木あなた
あ、うん……
壱馬はこんなにも優しそうなのに。


初日のあの衝撃が消えない。


だって、あのスキンヘッドを吹っ飛ばしてたんだよ?


いつになったら、私は壱馬を普通の優しいお兄さんと見られるようになるの!!
長谷川慎
長谷川慎
おい、あなた
倉木(なまえ)
倉木あなた
ん?あ、ごめん。なに手伝えば?
長谷川慎
長谷川慎
ちげぇよ!!俺は、その……っ
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっ、なになに
慎が珍しく口ごもるし、私に顔を向けるし……。


なんなの?いったい。
藤原樹
藤原樹
あ〜、なるほどな
その時、樹は何かに気づいたのか私の手を掴む。
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっ
何って聞こうとした時にはグイッと手を引かれ、リビングを出ていた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっ、待って待って。なになになになに!?止まって?
そう叫んでも何も言おうとしない樹。
倉木(なまえ)
倉木あなた
もうっ!!
思わず樹の膝に、
倉木(なまえ)
倉木あなた
止まれって言ってんの!
カクンッ。


膝カックンをした。
藤原樹
藤原樹
~~~〜っっ!!
なかなかきいたようで。


いやぁだってキレイに入ったからね。


あはは……。


ごめん樹。


こんなにキレイに入るとは思ってなかった。
藤原樹
藤原樹
~~っ、な、にすんだよ!!
相当きいた模様。


樹はこっちを睨みつけてくる……が。
倉木(なまえ)
倉木あなた
あはははははっ!!涙目!涙目になってる!!
私は指さして笑った?


いやいや、だって恐ろしい総長さんが膝カックンで涙目って……。


このネタ、誰に言おう。


……腹黒そうな壱馬にしよっかな〜。
藤原樹
藤原樹
あなた……お前なんか黒いこと考えてねぇ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
いやいや、まったく?
涙目になっても鋭い……。


まぁ私は悪くないかな〜?


何も言わずに引っ張る樹が悪い。
藤原樹
藤原樹
……俺に膝カックンするなんて、どこ探したってあなただけだな、きっと
フッと笑う樹を見て殴り飛ばしたくなる。
倉木(なまえ)
倉木あなた
あれ〜、それは、俺のことが怖くてそんなこともできねえ〜みたいな自意識過剰タイプですか?
藤原樹
藤原樹
お前っ、ほんっと腹立つな
藤原樹
藤原樹
まぁいい。入れ
そう言われてポイッと投げられるように入れられたのは、さっきまで私がいた洗面所。
藤原樹
藤原樹
ここ座れ
あまりにも睨みつけてくる樹が怖かったので、大人しく従う。


……さっきの膝カックン、絶対根に持ってるな……。


目つきがヤンキーだもん。


あ、ヤンキーだったか……。


すると、樹は洗面台の上にある棚をガタガタといじりはじめた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……何すんの?
私が連れてこられた意味がわからない……。


__ブォォォオオオオオオオオオ。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……きゃっ
倉木(なまえ)
倉木あなた
……髪、乾かしてくれてるの?
藤原樹
藤原樹
見りゃわかんだろ
そう言うと、樹はプイっとそっぽを向く。


え〜、照れてる?


鏡越しにしか見えない樹。


でも、その表情は微妙にみえない。
藤原樹
藤原樹
……
倉木(なまえ)
倉木あなた
……
ブォォォオオと、ドライヤーの音だけがする。


私の髪に指を通す樹の手の動きが、なんだかくすぐったい。


思わず頭を少し振った。
藤原樹
藤原樹
猫かよ
倉木(なまえ)
倉木あなた
違う
藤原樹
藤原樹
キレイな髪だな〜〜
倉木(なまえ)
倉木あなた
……っ
そう褒められると、すっごく恥ずかしい。
藤原樹
藤原樹
……本当に天然の黒って感じ。……染めたことねぇだろ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
……当たり前。まだ高校1年生やってるの
藤原樹
藤原樹
翔平とか真っ赤じゃねえか
倉木(なまえ)
倉木あなた
あれは例外でしょ
あんな真っ赤な髪。


何に憧れたのかわからない。


戦隊モノのヒーロー?
倉木(なまえ)
倉木あなた
そう言う樹も黒じゃん
藤原樹
藤原樹
まぁな……
倉木(なまえ)
倉木あなた
ヤンキーのくせに
藤原樹
藤原樹
俺、これでも染めてんだよ
倉木(なまえ)
倉木あなた
は?
私は思わず振り返る。
藤原樹
藤原樹
うわっ、いきなり振り返るなよ、ヤケドするぞ
倉木(なまえ)
倉木あなた
え、あ、ごめん
とりあえず前を向く。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……そんなに染まりにくい髪なの?
藤原樹
藤原樹
……違う。黒に、染めてんだ
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁ?
黒染めしたの?


なんのために?


染めてないんでしょ?
藤原樹
藤原樹
地毛が、茶色いから。……黒がよくて、染めた
倉木(なまえ)
倉木あなた
ヤンキーで不良のくせに、黒がいいなんて意外
藤原樹
藤原樹
黒のがカッコイイだろ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
ヤンキーで不良で暴走族の総長のくせにセンスいいね
藤原樹
藤原樹
褒めるのか、けなすのかどっちかにしろよ
倉木(なまえ)
倉木あなた
褒めてるよ。ヤンキーで不良で暴走族の総長で、自意識過剰野郎なのに黒髪だなんていいと思う
藤原樹
藤原樹
ぶっ飛ばすぞ、お前
樹は私の髪を軽く引っ張る。
倉木(なまえ)
倉木あなた
うっわ!痛い!レディの髪を引っ張るなんて
藤原樹
藤原樹
お前のどこがレディだよ……もういい
ため息をつく樹。


ふざけすぎたかな?
倉木(なまえ)
倉木あなた
ねぇ、怒った?
私は下から樹を覗き込む。
藤原樹
藤原樹
~~もういいっ
下から覗き込んだ私の頭をグイッと下に向けると、また私の頭をわしゃわしゃと乾かし始めた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
もっと優しくしてよ
藤原樹
藤原樹
カレー冷めるから。早く済ませようと
倉木(なまえ)
倉木あなた
あ〜、お腹すいた。早くしてね
藤原樹
藤原樹
……お前なぁ
そこから私たちに会話はなく、ドライヤーの音だけが洗面所に響いていた。

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