慎side
面白くないと言えば嘘になる。
気になるかって言われたら……。
そりゃ気になるだろって言う。
ただ、どうも気に食わない。
腹が立つ。
イライラする。
最近関わるようになったアイツ……倉木あなたは、するりと俺らの中に入ってきた。
そのあなたも含め、6人で話すのは今日でまだ2回目だったのに……。
なんでアイツとは、あんなに普通に話せたんだろう。
まるで、今までずっと一緒にいたみたいな。
俺たちに紛れていても、何も変わらない。
……それくらい、アイツが俺らの輪に入っていることに違和感がなかった。
性格に難アリだが。
『母さんに、今日夕飯4人分追加って言っとけ』
樹がそう言い放つと本当に嫌そうな顔をしたあなた。
そんな眉をひそめなくてもよくないか?
あなたはそのまま舌打ちでもしそうな顔をして、たまり場からでていった。
……で、本当に行くのかよ、樹の家。
樹んちは広いし落ち着くし、涼子さんの作るご飯もうまい。
だから行きたいけど、アイツがいるって、女がいるって思うだけでなんか気が引ける。
あなたが他の女どもと何となく違うことは気づいているのだが。
樹の言葉にみんなが一斉に頷く。
は……?
なくなったんじゃないのか?
奪還作戦?
まぁいいか。
翔平なんて、
とか言ってるけど、単純に見たいだけだろ。
まぁ……ピンクのモコモコの部屋着とか着てたら確かに笑っちゃうけど。
にしても憂鬱だ。
どこまで心を許していいかわからないだけに、すごくやりにくい。
……あなたに忠告、しとくかな。
アイツがこっちに深入りしてきて、樹が傷つくのを見るのはイヤなんだ。
その時、
腕を誰かに掴まれた。
__北人だ。
顔が強ばる。
北人は鋭い。
俺、なんか顔に出てた?
北人は俺の目をじっと見ると、
当たり前だ、バカ野郎。
北人はそう言うと、たまり場を出ていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!