__プルルルルル。
私のアナログな携帯が震える。
表示されたのは『080___』と、登録していない番号。
基本そんなのは、無視に決まってるけど、さっき樹に番号を教えたから樹からかもしれない。
なんの用だろう?
今後のためと、もしもなんかあった時のために 、一応メアドと電話番号を書いた。
まさか、こんなすぐにかけてくるなんて。
まだ倉庫を出たばかりだよ?
電話番号が書いてあったから電話しただけ〜とかだったら怒るよ。
__ブツッ!!
……は?
え?
なんで来んの?
倉庫を出たところだし、まだヤンキーが周りにいるんだけど?
翔平も翔吾も、もうどっかいったみたいでいないし。
ここで待ってろって正気ですか。
後ろを振り向くとダッシュしてくる樹。
えっ、なんでそんなに必死で走ってるの。
どうしたの。
わかんないよ!!
なんだそれ。不器用か。
私、バイクなんて持ってないけど……?
怖すぎる!
絶対スピード狂でしょ。
もちろん勘だけど……。
すると、樹はスタスタと歩いていき、そばにあった大量に停まっているバイクの1つを押してきた。
うわぁぁぁあ!
樹が睨んでくる!
脅されてる!
ふぅん、なんかよくわからない。
バイク乗る人が嫌いって言うか、バイクをブインブイン言わせてるヤンキーが苦手というか。
あっ、そうそう。
私の目の前にいる、こんな感じの人とかね。
そう思ってることバレたら殺されそう……。、
ところが、樹の運転は思ったよりも安全。
私が乗ってるからかな?
もしそうだとしたら、樹って優しいかも、なんて思ったりね。
涼子さん、そんなに心配なのかな……?
私一人でも平気なのに……。
そう言うと、お礼に驚いたのか、樹は私の頭を上から押さえつける。
て、照れ隠し……だったりする?
樹は、私の頭をわしゃわしゃとしながら言う。
なんだコイツ!!
せっかく人が良い奴かもって思ったのに!
髪わしゃわしゃしないでよ!
髪型が崩れるじゃん!
それ、キメ顔で言うセリフなのか。
冗談でも笑えないぞ、ジャガイモが待ってる……とか。
まぁ、樹らしくていいけど。
私は樹の後を追いかけて、スーパーに入った。
2人で家の玄関を開ける。
すると、涼子さんがドタドタドタとすごい音を立てながら1階に降りてくるのがわかる。
スーパーの袋を2つ持つ樹を見て、目を丸くさせる。
てか樹、お菓子買いすぎ。
もはやジャガイモがついで。
私は樹に買ってきてって言ったんだよ?
まぁ別にいいけど……なんだかんだで私の好きなチョコ買ってくれたし。
今、はそう言うと脱いだ靴も揃えずに階段を駆け上がる。
私は渡されたジャガイモとチョコを見て、なぜか心がポカポカして。
おいしいって言わせたくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!