第6話

脱・一般人は無理
4,990
2020/09/12 02:08
階段を上り終えて左を向く……と、確かに突き当たりに部屋がある。


いやいやいやいや……。


ちょっと待てよ?


よくよく考えよう。


普通こんなところに職員室ってあるものなの?


しかも窓がなくて部屋の様子は見えないし、そんなの生徒からしたらよくないよね?
倉木(なまえ)
倉木あなた
嘘つかれた……?
絶対そうだ。


あのクソ野郎……。
川村壱馬
川村壱馬
……あ、まだ入ってなかったんだ
声がした方に顔を向ける。


藤原と優男の2人組……。
藤原樹
藤原樹
……チッ
今、藤原ってばチッって言ったよね?


舌打ちされた?


いやいや、したいのはこっちなんですけど!?
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、さすがに入らないか……
優男もなんで残念がってるの?


入るわけないよ!


明らかに職員室じゃないもん!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
なんで嘘ついたの?
藤原樹
藤原樹
面白そうだったから
倉木(なまえ)
倉木あなた
私、職員室に行かないとなんですけど。このままだと転入初日から……
キーンコーンカーンコーン。


遅刻しちゃう……そう続けようと思ったら、チャイムが鳴り響いた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
え……
川村壱馬
川村壱馬
あ、ごめんね。あなたちゃん。遅刻させちゃった
眉を下げて本当に申し訳なさそうに言う優男に対し、藤原は目線すら合わせないの!?
倉木(なまえ)
倉木あなた
ねぇちょっとあんた……
吉野北人
吉野北人
なに騒いでんの?
職員室だと教えられていた部屋のドアがあき、中から人が出てきた。


ふと視線をあげると。
倉木(なまえ)
倉木あなた
う、わぁ……
藤原と優男に負けないくらいのイケメン。
浦川翔平
浦川翔平
だれだれ〜?
長谷川慎
長谷川慎
は?女?
が3人。
長谷川慎
長谷川慎
樹、コイツ誰
誰って、こっちのセリフなんですけど……。
藤原樹
藤原樹
コイツ、姫
そして、そのまま意味のわからないことを返す。


姫?


は?


私、あなただけど。


「「「「え……」」」」


わけのわからない私は首をかしげるけど、藤原以外の4人は目を見開いた。
川村壱馬
川村壱馬
え、もう1回言って……?
冷静そうな優男でさえ、困惑しているように見える。
藤原樹
藤原樹
だから、姫にする。コイツを
ん?ん?ん?


「「「「はぁ!?」」」」


4人の声が揃った。
吉野北人
吉野北人
待って、樹正気!?俺は嬉しいけど
藤原樹
藤原樹
あぁ
長谷川慎
長谷川慎
……なんで、コイツ?
藤原樹
藤原樹
なんとなく
浦川翔平
浦川翔平
嘘だろ!!樹、なんの気の迷いだ!
藤原樹
藤原樹
嘘じゃない
優男を除いた人が藤原に詰め寄ってるけど……。


いったい何?


そして全員の視線が一斉に私に向けられる……。


じりじりと。


なんか居心地悪いんですけど!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
な、何よ
私が、手をぎゅっと握った時だった。
浦川翔平
浦川翔平
とりあえず、ちょっと来い!
倉木(なまえ)
倉木あなた
ちょ……っ、何すん……
1番背の低い男の子に腕を引っ張られ、例の部屋に押し込まれた。


いきなり引っ張られた腕が痛いのなんの。


だけどその先には……。


まるで、家のリビングみたいな光景が広がっていた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
何、ここ……
倉木(なまえ)
倉木あなた
学校……だよね?
浦川翔平
浦川翔平
当たり前だろ。そんな瞬間移動ができるか!
うるさいチビ。


本当はチビとか言っちゃダメだけど、私より少し高いだけで、本当にチビなんだもん。
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん落ち着いて、とりあえずここ座ってね〜
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっと……
優男にさりげなくエスコートされながら、私はそばにあったソファに座った。


なんなのこの5人組。
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、まず自己紹介するね
勝手にしててよ。


気が向いたら聞いとくから。
川村壱馬
川村壱馬
まず、俺は壱馬ね。壱馬って呼び捨てでいいよ。2年生だけどね
1つ上か……。
川村壱馬
川村壱馬
で、このチビで赤髪が翔平
浦川翔平
浦川翔平
はぁ!?チビってなんだよ、チビって!!
あ、壱馬と私、思ってること同じじゃん。
川村壱馬
川村壱馬
で、コイツが北人
あ、チャラい。
川村壱馬
川村壱馬
で、この不機嫌丸出しが慎
長谷川慎
長谷川慎
ったく、ふざけんなよ
あ……この人、絶対に女嫌いだ。


私から1番距離を置いて、横目に睨みつけてくる。
川村壱馬
川村壱馬
川村壱馬
川村壱馬
もう名前は分かってると思うけど、コイツが俺たちのトップ。藤原樹だよ。みんな樹って呼んでる
倉木(なまえ)
倉木あなた
トップ……?
ただのイツメンじゃないの?あんたら。
浦川翔平
浦川翔平
てめぇ、樹を知らないとは言わせないからな!!
倉木(なまえ)
倉木あなた
知らないって言っちゃダメなわけ?
川村壱馬
川村壱馬
あ〜、やっぱりあなたちゃん、知らないか。俺らのこと
知りません。


転校と言っても住んでる家は変わらないしな〜。


近所の有名人なら把握してるんだけど……。


隣の隣には俳優の人が住んでるとか……。
吉野北人
吉野北人
俺らのこと、知りたい?
北人が意味深な顔を向けてくる。


なんかオーラが甘ったるいよね、北人って。
倉木(なまえ)
倉木あなた
どうでもいいから、ここから出てもいい?
私がそう言うと5人は目を見開いた。


あ、ううん。


樹だけは、少し笑ってるけど。
長谷川慎
長谷川慎
興味ねぇってことかよ?
そうそう、そういうこと。


慎、よくわかってるね。
浦川翔平
浦川翔平
俺らに興味ないのかよ!?女なのに!!
声のボリューム半分にしてよ、翔平。


女なのに……て。


お前ら女ホイホイか。
藤原樹
藤原樹
お前ら、コイツに教えとけ。姫のこととかも
はい、待った。


樹が言いだしっぺでしょうが。


姫がなんだか分からないけど、さっき反対の声もあったじゃん。
川村壱馬
川村壱馬
まぁ仕方ないか。樹の言うことは絶対……でしょ?
長谷川慎
長谷川慎
……チッ、樹が言うなら仕方ねぇな……
吉野北人
吉野北人
いいんじゃね?俺、女の子いた方が華あると思うんだけど
浦川翔平
浦川翔平
俺は樹に従うぜ!!なんてったって、俺たちのトップなんだからな!!
やっぱ、樹ってすごいのかな?


ていうか、私のここから出たいは無視??
倉木(なまえ)
倉木あなた
私、出たいって言わなかったっけ?
藤原樹
藤原樹
ダメ、帰さない
倉木(なまえ)
倉木あなた
私、興味ないの。とてつもなく
藤原樹
藤原樹
俺が残れって言ってるんだが?
倉木(なまえ)
倉木あなた
もっと言うと、この場にいるのがイヤなんですけど!!
浦川翔平
浦川翔平
おい、お前!
倉木(なまえ)
倉木あなた
……あなた
浦川翔平
浦川翔平
は?
倉木(なまえ)
倉木あなた
私の名前、あなたっていうの。……お前、とか見下されてるみたいでイヤだから
浦川翔平
浦川翔平
……おい、あなた!
あ、意外と素直なんだ。
倉木(なまえ)
倉木あなた
なに?翔平
なんか面白くて少し微笑んで返す。
浦川翔平
浦川翔平
……えっ
ん?


なんで赤くなってんの?
倉木(なまえ)
倉木あなた
翔平?
浦川翔平
浦川翔平
あ、ちょ、は?あなたマジなんなの
吉野北人
吉野北人
あれ〜、ついに翔平くんにも春が来たのかな〜?
北人が茶化していて、なんかかわいそうだな。


というか、翔平は私に何を言おうとしたのかな……?
藤原樹
藤原樹
あなた
藤原樹
藤原樹
翔平の代わりに言ってやるよ。お前、今ここから出たら死ぬぞ
倉木(なまえ)
倉木あなた
し、死ぬ?
なんで?ここ戦場なの?なんなの?
藤原樹
藤原樹
ここの2階な、3年の教室が並んでんだわ
フッと笑う樹。


いやいや、だから何?
藤原樹
藤原樹
俺らさ、ちょ〜っとばかし人気なんだ
ん?


人気?


アイドル的な?


そんな感じで?
倉木(なまえ)
倉木あなた
そんなことあるわけ?毎朝、キャーキャー言われる、あのマンガみたいなことが起こってるわけ?
まぁ確かにこの5人、みんなイケメンだけど……。
藤原樹
藤原樹
ありえる
そう断言する樹に少しだけ……。


うわぁ……。


引いたのは秘密。
倉木(なまえ)
倉木あなた
で?100歩譲ってそれがありうるとして、なんで私が死ぬの
藤原樹
藤原樹
分かってねぇなぁ
倉木(なまえ)
倉木あなた
そう言って樹はソファから立ち上がっ出入口の方へ歩く。


なんだろうと見ていると、樹が"ちょいちょい"と手招きしてきた。


……来いってこと?


私はソファから立ち上がると、樹のそばへ近寄った。
藤原樹
藤原樹
ドアに耳、つけてみろ
え?


私は首をかしげながらドアに耳をつけると、廊下の声が聞こえてきた。


今はちょうどホームルーム後の休み時間みたい。





「ねぇ、ホームルーム前に樹のこと見た?」

「見た見た!壱馬くんと一緒に!!」

「あ〜!もうほんと素敵!!」






キャイキャイ。


そんな感じの会話。


え、なんか気持ち悪い。


しかし樹はご機嫌だ。
藤原樹
藤原樹
いい事教えてやるよ。この部屋って、俺たち5人以外は入っちゃいけないわけ
倉木(なまえ)
倉木あなた
ん?
私、バリバリ入ってますけど……?
藤原樹
藤原樹
誰が決めたかは知らねえけど、暗黙の了解ってヤツだ
そして次の瞬間、樹は……ドンッ!!


ドアを思いっきり蹴った。


いや、思いっきりじゃないかもだけど。


それくらい、重い蹴り。
倉木(なまえ)
倉木あなた
ちょ、何やって……
藤原樹
藤原樹
黙れ





「ねぇ、今すごい音しなかった?」

「樹たちのたまり場からだ!」

「あそこどうなってるのかな?入ってみたいよね」

「ちょ!無理でしょ!あそこはあの5人以外入れないの!特に女は」

「……そうね、女が入ることは許されない。入ったら全校生徒からリンチ食らうものね……」

「前に1回あったじゃん。無断で樹ファンの子がここに入って……」

「あぁ……退学した子…」









……は?


なにそれ。


ここそんな神聖な場所なわけ?


樹を見るとなんかドヤってますけど……。


まぁ顔はイケメンだけどさ、ヤンキーじゃんか。


私ヤンキー嫌い。親不孝者だもん。
藤原樹
藤原樹
分かったか?お前は今出たら、死ぬぞ
なるほど。


たしかに、これは死ぬ。


私は今、出られないのか。
藤原樹
藤原樹
ってことで、ここを出られるまで俺らの話を聞けよ
もう……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
勝手にして……

プリ小説オーディオドラマ