樹side
家に帰ると……。
母さんの様子が変だった。
能天気な母親だしな……。
わりといつもテンション高くて、おバカなところがある母さんだけど、さすがに……。
ご機嫌のまま掃除を始めたらしく、1階から3階まで、ピカピカ。
これは、聞けっていう振りだな。
もう聞く気満々だったんだけど。
そのまで言ったなら話せよ。
気になるだろ。
俺が怒るような内容なのかよ……。
いや、それで母さんがご機嫌はなくね?
母さんは「きゃ〜っ!」と言いながら手足をジタバタさせている……。
って、どういうこと?
思わずうつむいて考える。
ハッとして顔を上げた。
瞬間、
パチンと音を響かせ、母さんのビンタ。
い、いてぇよ……。
てか、そういう意味じゃないって……。
だったら誤解するような言い方するなよ!!
母さんから一部始終を聞いたところ。
だから、あんなにご機嫌で、娘ができたなんて喜んでたのか。
まぁ確かに一緒に住むわけだから。家族といえば家族になるんだが……。
無愛想の息子って……。
ひどい言われようだな。
しかも、あっさり息子を否定しやがって。
はぁ……。
めんどくせぇ。
けど、やるしかないか。
まともな奴が来ますように、と俺は1回手を合わせてから、部屋の掃除をはじめた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!