第8話

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2020/09/14 06:26
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁぁぁぁあ
思い切りため息をついた。


あれから無事、誰にも見られずあの部屋を出たはいいんだけど、やっぱり職員室が見つからず。


というか、嘘を教えられたから、誰にも聞く勇気が出なかったっていうか……。


まぁそんなこんなで20分も歩き回ってやっと見つけた職員室では、転校早々遅刻したのにもかかわらず、なぜか何も言われなかった。


私は次の授業の冒頭で、クラスメートに紹介されることになった。


こんな中途半端な時間から教室に行くなら、明日がよかったな〜、なんでも思ってみたり。


そんなことしたら、無断欠席だけどね。


今、私の目の前にいるのは坂本先生。男の先生だ。
坂本先生
坂本先生
お前のクラス。1年C組な
倉木(なまえ)
倉木あなた
あ、はい
坂本先生
坂本先生
担任、俺な
倉木(なまえ)
倉木あなた
よろしくお願いします
この人が担任なんだぁ……。


ふと顔を見る。


うーん、20代後半ぐらい?


若いのかな?そう見えるだけ?


ぶっちゃけ、なよなよしく見える。


ほら、さっきヤンキーとかイカつい人を見たからさぁ、普通の人すぎて弱く見える。



そうこう思っているうちに教室の前についた。


うわ……っ、壁が汚い……。


でも良かった。


先生までイカつかったら、学校に行くのを躊躇する日があるよ、きっと……。


と、思っていたその時、
坂本先生
坂本先生
おめぇら静かにしろ!!
バンッというドアを勢いよく開ける音とともに聞こえたのは……怒鳴り声。


って、
倉木(なまえ)
倉木あなた
……えっ?
え?え?今、怒鳴ったのってまさか……。
坂本先生
坂本先生
悪いな、倉木。コイツらうるさくて……
先生なの!?


しかも、ヒソヒソと聞こえるのは……。







「やっぱこええな、ジンジン」

「だってジンジンあれだろ?元暴走族のトップだろ?」

「えっ、俺、坂本組の時期組長って聞いたぜ?」

「噂によれば、百人斬りして全員病院送りにしたとか……」







は?


え?


坂本先生って何者なの!?


ジンジンっていう可愛いあだ名と噂に、ギャップがありすぎるでしょ……。
坂本先生
坂本先生
あ、倉木。あれほとんど嘘だから気にすんなよ
ほとんど……?


全部が嘘ではないということ……?


気にするよ。


イカついヤンキーに恐れられているなんて!!


な、なんで先生までヤンキーなの……この学校。


ヤンキー、大嫌いなのに……。



ショックを受けながらも、教室に入る。


入った瞬間、私の顔が引きつった。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……えっ、嘘でしょ
そこに黒髪なんてかわいい生徒はいなくて、金髪やら赤やら青やら紫やら……。


しかも髪の色が変なことに加えて、




「ぁん?転校生?」





イカついっ!


ピアスもたくさん、ついてるし!


痛くないの!?


お、女の子は……いるよね?


ところが……。





「え〜?転校生?うわっ、地味子ジャーン」

「ウケる〜。今時黒髪とか何狙い?純情路線?」






こここここ、怖すぎ!!


金髪でグルグルに巻かれている髪の毛。


バサバサと音を立てそうなまつ毛。


魔女のような付け爪。


これは……。


さすが不良校……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
えっと……倉木あなたです。泉野高校から来ました。よろしくお願いしま……
浦川翔平
浦川翔平
はぁ!?泉野!?
誰だよ!私の自己紹介を遮ったの!!
浦川翔平
浦川翔平
すげぇ!!あなたそんな頭よかったの!?
倉木(なまえ)
倉木あなた
は?
え、今あなたって呼ばれたし、声に聞き覚えが……。
浦川翔平
浦川翔平
だよなぁ、お前みたいな奴は、ぜってぇ頭がいいって決まってるんだよなぁ
そこには、うんうんと頷く、
倉木(なまえ)
倉木あなた
し、翔平……
翔平がいた。





「なぁ、泉野ってそんな頭いいのかよ?」





誰かがぽつりと言った。


転入してきた立場で言うのもなんだけど、偏差値も全国トップクラスで、かなり有名だと思ってたよ?
浦川翔平
浦川翔平
さすがてっちゃーん、バカはバカ校しか知らねぇもんなぁ!
翔平はニヤニヤァっと返した。


ってちょっと!


今のは、てっちゃんと呼ばれてる人に対して失礼すぎないか!!






「はぁ〜?翔平だってバカじゃねぇか。なんで知ってんだよ」
浦川翔平
浦川翔平
俺、頭いいからな!
うわぁ、嘘っぽい。


絶対に嘘だ。信じない。


というか……なんか意外だなぁ。


さっきの樹の話とか、そのファンたちの話を聞くと、樹たちRAMPAGEという暴走族が、学校を仕切ってるのかと思ってたから。


幹部である翔平のこと、みんな持ち上げてるのかと思ってた。


けど、なんか……。


普通の友達って、かんじだなぁ。
坂本先生
坂本先生
あ〜、2人は知り合いなのか?じゃあ倉木の席はアイツの隣な
ぎゃっ!


翔平の隣〜?


暴走族と、しかもその幹部と隣なんてイヤだなぁって思ったけど……。


知らないヤンキーよりマシか……。


イカつい とも多いしね、接しやすい翔平の隣のほうが何かと安心かもしれない。






「え〜、翔平の隣なのぉ?あの子」

「サイアク〜。RAMPAGEに近づくなよ」





うわぁ、このクラスにもRAMPAGEのファンがいるのかぁ、面倒くさい……。


そんなこと思いながら、翔平の隣の空席に座った。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……よろしく
浦川翔平
浦川翔平
おう!!よろしくな、あなた!!
翔平の笑顔にほっとしながら……。


学校生活、頑張ろうっと!!


そう意気込んだ私だった。

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