第41話

伝えたい思い
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2020/10/21 10:14
樹side

藤原樹
藤原樹
と、言うことがあったんだがどう思う?
川村壱馬
川村壱馬
は?
吉野北人
吉野北人
は?
今は、放課後の学校のたまり場。


俺は、あなたとの10日ほど前の出来事を壱馬と北人に話していた。


翔平と慎は追試らしい。


あの2人は進級が心配なくらい勉強ができないからな。
川村壱馬
川村壱馬
……待って。樹、もう一度説明して
壱馬はやはり困惑しているようだ。


いや、俺の方が困惑したけどな。


なんかモヤモヤイライラするし。


よくわからない気持ちになるし。


もうなんなのか。
川村壱馬
川村壱馬
つまり、話をまとめると、あなたちゃんが落ち込んでる理由として、青山陸かRAMPAGEを好きなんじゃないかと考えた。そしたらあなたちゃんの結論は、まさかの、全然わからない。……ここまでいい?
……いや、合ってるけど。
藤原樹
藤原樹
お前なんで陸って奴の名前……
俺、転校して来たやつとしか言ってないのに。
川村壱馬
川村壱馬
転校生は、把握してるんだ。あなたちゃんの時ももちろん?ただ、なんで?とか聞かれるのめんどくさいから、噂になってるって言ったけど
藤原樹
藤原樹
へぇ……
川村壱馬
川村壱馬
で、樹は何に悩んでんの?
藤原樹
藤原樹
あなたなら、絶対にRAMPAGEだって即答かと思ったんだよ。というか、それを聞きたくてわざと吹っ掛けたみたいなものもあってさ
吉野北人
吉野北人
う〜わ、樹ダサ……
北人はそういうの、素直に言えるからいいよな。


……って、嫉妬しても仕方ねぇか。
川村壱馬
川村壱馬
そしたら樹、フラれちゃったんだ?
少し楽しそうに笑う壱馬。


……なんか嬉しそうじゃね?
吉野北人
吉野北人
樹が失恋っておもしれぇなぁ〜。あなたチャンすごすぎ
北人は、触っていたスマホをポイッとソファに投げると、俺に目を合わせてニヤニヤと笑ってくる。


その顔ムカつくし。


っていうか、お前ら俺の悩み、軽く見すぎじゃね?
藤原樹
藤原樹
あなたが俺らのことを好きじゃなくて、RAMPAGEから離れていったら、辛いのは俺だけじゃねぇだろ?それに……
おれは壱馬たちに……。


『暴走族じゃなければよかったのに』


そう言われたことだけは言えずにいた。


そんな言葉、聞くのは俺だけで十分だと思った。


あの言葉は俺の中で今もグルグルとまわってる。
浦川翔平
浦川翔平
ただいまー!!
追試帰りだと言うのに大声で帰ってきた翔平。


慎は超眠そう。


というか、その寝ぼけ方からして追試中もねてたんだろうな。
長谷川慎
長谷川慎
……なんの話してたんだよ
川村壱馬
川村壱馬
樹の恋の話だよ
長谷川慎
長谷川慎
あぁ、あなたか
気持ちを知られてるのはわかってるんだけど。


名前を出されるとなんか恥ずかしいからやめてほしい。


今は少しギクシャクしちまっているし……。
長谷川慎
長谷川慎
……何かあったのか?ただの惚気じゃねぇんだろ?
俺、惚気たことなんかねぇんだが。










長谷川慎
長谷川慎
ふ〜ん
浦川翔平
浦川翔平
あ、樹フラれたのか!?
話を聞き終えた慎と翔平は、それはそれは楽しそうにそういった。
浦川翔平
浦川翔平
あれ、そういえば俺、今日、あなたと転校生見たかも!!
浦川翔平
浦川翔平
……なんか、教室に2人でいた!
吉野北人
吉野北人
教室で2人とか……、あなたチャンとられるかも?
正直、俺はそれどころじゃない。
吉野北人
吉野北人
俺ら暴走族だけど、あなたチャンをポッと出の転校生に取られるのは納得いかないよね〜!
確かにそうなんだけど、俺の心のダメージはそれだけじゃなくて。
川村壱馬
川村壱馬
樹さ、他にもあるんじゃない?
藤原樹
藤原樹
……なんでそう思うんだよ?
川村壱馬
川村壱馬
樹のことは俺が1番わかってると思うけどね
壱馬は、いつもそうだ。


俺のことら1番そばで見てくれている。
川村壱馬
川村壱馬
……樹、言えよ。俺たち仲間じゃん?辛さは共有しなくちゃ……な?
俺の判断で言いとどまったこともら壱馬がそう言ってくれるなら大丈夫な気がしてしまう。


あたりを見まわす。


みんな、俺の話を真剣にきこうとしてくれている。


まっすぐ俺を見ている。


言ったらコイツらが傷つくんじゃないかって思った。


それに……、この言葉によってみんながあなたに腹を立てるんじゃないかとも思った。


けど、コイツらはそんな奴らじゃない。
藤原樹
藤原樹
……あなたに、『暴走族じゃなければよかったのに』って、言われた
「「「「え……」」」」
藤原樹
藤原樹
その時のあなた、なんか消えちまいそうで……。何も言えなかった
長谷川慎
長谷川慎
あなたがそんなこと言ったのか
慎は、少し戸惑いながらも怒ることなくそう言った。


真っ先に怒るなら慎だろ……と思っていたから、少しホッとする。
吉野北人
吉野北人
やっぱあなたチャンはヤンキー絡みでなんかあったよね?しかも結構重たそう
藤原樹
藤原樹
……北人もそう思うか?
でも、俺らがあなたに聞いて話してくれるだろうか。


話してくれる気があるなら、とっくに話してくれてると思うし。
川村壱馬
川村壱馬
俺もそう思う
浦川翔平
浦川翔平
じゃあさ!!あなたに、お前の嫌いな奴らと俺らは違うんだぜ!っていうのを伝えればいいんじゃね!?
藤原樹
藤原樹
でも、それだけであなたはまたいつもみたいに笑いあってくれんのかな
川村壱馬
川村壱馬
樹にしては珍しく弱気だな
藤原樹
藤原樹
……仕方ねぇだろ。どうすればいいんだよ
今の俺、本当にカッコ悪い。
長谷川慎
長谷川慎
……迎えに行けよ、樹
そんな俺に、慎が背中を押す。
長谷川慎
長谷川慎
……あなたに会う。そして、俺らもちゃんとあなたと向き合う。あなたは悩んでんだ。……手を引いてあげろよ、それができるのは樹だけだろ
慎は女のこと嫌いだけど、あなたのことはちゃんと見ている気がする。


……なんか、悔しいけど。
藤原樹
藤原樹
おれ、総長なのにカッコ悪いよな
このRAMPAGEの、トップに立ってるんだ。


それなのにウジウジしてるし。


あなたに会ってから、俺も色々変わった気がする。
浦川翔平
浦川翔平
何言ってんだよ。樹がカッコ悪いなんて、今に始まったことじゃないだろ
藤原樹
藤原樹
は?
翔平のひと言に、マヌケな声が出てしまう。


翔平はへへんッ!と威張るように俺の前に立つもんだから、チビのくせになんか上から目線に感じる。
浦川翔平
浦川翔平
……俺らの総長だもん。カッコ悪くたってそれが樹だぜ。カッコ悪くてもいいから行ってこい!!
翔平はニカッと笑って俺の背中をバシンと叩いた。
藤原樹
藤原樹
俺、行ってくるわ
なんか、勇気を貰った気がする。
浦川翔平
浦川翔平
お〜!いってらぁ〜
川村壱馬
川村壱馬
頑張れ
今、話していて思った。


俺、本当にあなたのことが好きだ。


そして、RAMPAGEのことも好きだ。


だけど……あなたはヤンキーが嫌いだ。


でも、自惚れかもしんねぇけど、アイツは俺らのことを嫌いじゃないと思う。


だから今、アイツのところに行かなきゃと思う。


アイツの過去のトラウマを吹き飛ばすくらい、


俺らはおれらだってことを……


伝えたいから。

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