第3話

重 な る 笑 顔 .
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2022/06/23 10:39





カラララララ…

テラスの扉を開けると
少しぬるくなった風が頬を撫でた


あなた  「…もっと広いと思ってました」


テラスには 木製の椅子と机が2組だけ

地面には人工芝
所々にお花の咲いた植木鉢が置かれている



美希  「ん?…ぁぁ。中庭が別にあるからね」
美希  「ここは人にはあまり聞かれたくないことを話すためのスペース…かな?」

病院の設備に感心する

ガタ…ッ
美希  「どうぞ」

美希さんが引いてくれた椅子に座る

あなた  「ありがとう…ございます」

私の言葉に答えるように微笑む美希さんの顔は
少し緊張しているように見えた

美希  「話したいことは…もう気づいてると思うんだけど」

美希 「あなたちゃんの両親のこと」


少し目眩がする
あなた 「…はい」


美希 「1から説明すると…」

美希 「あなたちゃん達がいたデパートは休日なこともあって賑わってたの。そこに目をつけたヴィランがデパートを襲った」
美希 「でも…相手ヴィランは少人数だし
個性もそこまで強いわけじゃなくて」
美希 「ヒーローが何人か向かうだけで済む〝はず〟だったの」

含みのある言い方に胸が苦しくなる

美希 「…ヴィランの中の1人がヒーローを前にパニックになった」


美希 「個性が暴走したの」
美希 「少人数のヒーローでは止められなかったわ」

そこに運悪く…ってことか
美希 「…即死だった…」

静かに話を聞いていた私は

その言葉に俯く


あなた 「そう…だったんですね」
美希 「あなたちゃん…」


あなた 「私…親族居ないんです」
美希 「……。」


あなた 「両親は駆け落ちで…家を捨てて結婚したから。」

あなた 「どうしたら…いいんですかね。」
美希 「…!!」


美希さんの目を見てそう言うと頬に冷たいものが流れる

視界がにじむ中で美希さんの悲しそうな…苦しそうな顔が見えた

あなた 「私が…ッ もっと強ければ…守れたかもしれないのにッ!! 」

手に力が入る
美希 「あなたちゃん…ッ…」

美希さんが肩をさすってくれる


耳元ですすり泣く声が聞こえた




















美希 「一緒に住もっか」
ひとしきり泣いた後に

1拍おいて美希さんが言った


あなた 「え ?」

状況が読み込めない私をじっと見たあと

ゆっくり立ち上がった

美希 「お母さんの友達なの 私。」
あなた 「え? ?!」


もっと混乱してきた

あなた 「えっと…それは地元の?」

美希さんがゆっくり頷く
美希 「あなたちゃんの笑う顔に面影があって…懐かしくなっちゃった」


そう言って悲しそうに笑う
美希 「可哀想だから引き取るなんて間違っても思っちゃダメよ」

美希 「私の大事な親友だから」


美希 「ね ?」



優しく微笑んでくれる美希さんの顔が

沢山の愛情を注いでくれたお母さんの笑顔に重なった



あなた 「お願いしても…いいですか」





















美希 「!!……もちろん!!」

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