『おかぁ…さん…?』
頭が痛い
手に力が入らない
『おと…さ』
声も掠れる
周りは瓦礫の山
少し離れたところから騒がしく音が聞こえる
『…どこいったの…?
おかー…さん おとーさん…?』
下半身が瓦礫に挟まれて身動きが取れない
今日は…私の誕生日だから
2人ともわざわざお休みを取ってくれて
沢山お買い物しようねって話してたのに
目眩が収まって周りを見ると
すぐそばに両親が倒れていた
『2人とも…起きて
こっち向いて…』
小刻みに揺れる手を必死に伸ばす
『あと…少し…ッ
…!!?…ぁ…』
やっと掴めたお母さんの手は
ひんやりと冷たく
少し固くなった手からは
もう生気など感じられなくて
『ぁ…ぁぁ…あ゛ぁ!!』
胸が張り裂けるような衝動を叫んだ
『私は…どうしたらいいの…?』
大きなショックと気力の限界で
ゆっくりと意識がなくなる
『…?!! おい!まだ人がいる!
子供だ! 医療係呼べ!!』
誰…??
『…!!両親が…チッ…くそ…!
おい、まだ死ぬな。よく頑張った』
あぁ…視界がぼやけて…
『助ける
絶対死ぬなよ』
沈んでいく意識の中でその言葉が鮮明に聞こえた
『助けて…』
呟く様に言ったその言葉を最後に私は目を閉じた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!