青葉の目に力が入り逃げようと美冬に背を向けて走りだしたとき、
という美冬の低い声が聞こえその場で固まり動けなくなった。まるで金縛りのように。
美冬は俯いたまま青葉に近づき質問をした。
このまま何も喋らず口を閉ざしていても無駄だと思った青葉は観念し、大人しく美冬の質問に答えた。
青葉が逃げないとわかったからかいつの間にか拘束魔法は解けており、青葉はチラリと悔しげな驚いた顔をしている剱持の方を見た。
他にも何か質問が飛んでくるのではないかと思っていた青葉だったが、美冬の表情を見てその思考が消えた。
美冬は言葉を呟くと同時に顔を上げ、困り眉を作りながら目を細め諦めたような、悲しげな表情を浮かべた。
そう言い剱持に会釈をしてから目と鼻の先にある組織マーダに行こうとする美冬を見て何故か青葉は焦りを感じた。
青葉は咄嗟に美冬の名前を呼びながら駆け出し、腕を掴んだ。
青葉が自身の腕を掴んでくるとは予想していなかったのか、勢いよく振り向いた。
美冬の腕を掴み、疑うような顔で見つめた。
先程と同じような困り眉を作りながら笑い、首を横に振り答えるが、青葉はまだ疑っているような顔をしていた。
その様子を見た青葉は一瞬、ほんの一瞬だけ唇を噛み少しばかりの沈黙の後、深呼吸をして口を開いた。
その言葉を聞いた美冬の瞳孔が開いた。
僅かに反応のあった美冬の声が青葉の耳に届く前に、心配や焦りの感情が滲んでいる剱持の声が届いた。
その声で何かを察した青葉は笑顔で、
とだけ答えた。
自分のこの言葉に疑問を持ち、頭にはてなマークを浮かべたがすぐに答えを導きだした。
一連のふたりの会話を美冬は真顔で聞いていた。自分が知りたいと思ったが、話題に出すのを辞めた話を。この後2人によって明かされるであろう話を。
3人はマーダの美冬専用の部屋、ボス室へと入り、向かい合わせになっているソファに美冬、青葉と剱持の1対2で座った。
これから語られるのは、ピンク髪の可愛らしく誰からにでも愛されるような顔立ちをした神城青葉の隠されてきた過去だ。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。