第9話

君がいない教室。
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2018/01/21 13:28
それからしばらく、涼介は学校を休んだ。
先生の話によるとどうやら新しい曲を出す件で仕事が忙しいらしい。

いつもなら授業中ふと前の扉の方へ目を向けると、寝ているかちゃんと授業を受けている涼介が目に入るのに。
沙織
あなた元気ないね?
しばらく涼介が仕事で学校を休むことはなかったから、涼介がいないという寂しさを感じることはなかったし、それ自体忘れていたくらいだ。

好きな人が近くにいないのって、こんなに辛くて寂しいんだ。
沙織
………あなた?
受け答えのない私を心配したらしい沙織は、ほおづえをつく私の顔を覗いてきた。
あなた

あっ!ごめん、何!?

沙織
あなた大丈夫?
あなた

え……なにが?

とぼける私に、沙織は呆れたように大きくため息をついた。そして、両腕を組んでは口元をとがらせる。
沙織
山田くんがこなくなってからなんか変だよ!

ずーっとため息ばっかりだしなんだかずっと浮かない顔してる
やっぱり気づいていたんだ。
まぁ親友だもんね。当然か。
なんて、言えるものなら言ってみたいけど。
あなた

少しでも会えないのが寂しいんだ……。

沙織は逆に彼氏さんと別の高校で辛くないの?

沙織は考える間もなく“寂しくないよ”と答えた。
沙織
学校が終われば会えるし、なんかもうなれちゃった!
あなた

じゃあ……女の子関係とかで心配には?

沙織
ならない。信用してるからね
やっぱ沙織はすごい。大人だと思う。

それに比べ、私は幼い頃から涼介とはずっと一緒に過ごしてきたため、今みたいに少し会えなかったりするだけでとても不安になる。

彼女でも何でもない、ただの幼なじみなのに。
元気にしているのかな?

ちゃんと休む時間はあるのかな?

ちゃんと寝ているかな、ちゃんと食べているかな?



今、誰を思いながら過ごしているのかな?

沙織
今日夜、電話してみれば?
あなた

へっ!?

思わず私は顔を見上げた。
沙織の笑顔には、悪意など一つも感じられない。どうやらふざけて言ったような感じではないらしい。
沙織
なに“何で?”って顔してんのさ!
あなた

だ、だって用もないのに電話なんて………

そんなの、迷惑なのでは。

そう言いかけた私の口を沙織の人差し指がふさいだ。
沙織
そんな事いちいち考えてたら一生付き合えないよ!?
そんな事言われても。

いくら幼なじみだとは言え、忙しい中に用もないのに電話したら、きっと迷惑に思うに違いない。


それに、出れる暇があるなら少しでも休んでほしい。

私なんかのために貴重な時間を使ってほしくはないのだ。
沙織
あなたはもし山田くんから電話とかLIMEがきたら嬉しい?
………なんで突然そんな話になるのだろう。


でも、それは――――。
あなた

う、嬉しいよ……!

沙織
例え忙しい時でも?
あなた

う、うん!

その言葉を聞いた沙織は、まゆをつり上がらせ自信満々の表情を見せた。

そして、ただ一言「よし!」と声を上げると、私の両肩を掴み言った。
沙織
なら大丈夫!今日、絶対電話しなよ!
あなた

ええっ!………う、うん……っ

どこが大丈夫なのか私にはさっぱり分からなかった。

けど、沙織が大丈夫だと言うならきっと大丈夫なのだろう。




親友に背中を押された私は、今夜、涼介に電話をかけてみることに決めた。

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