第6話

二人の過去
482
2020/09/09 15:20
あなた

本当にごめんなさい。

さっき炭治郎君からお昼の話を聞いた。
私のためにお昼を持ってきてくれたのに。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
いや、いいんだ。俺も気遣いが足りなくてごめんな。
あなた

いえ、謝るのはこっちです。親切でやっていただいたのにそれを責めるなんて。

あなた

本当にごめんなさい。

あなた

そして、ありがとうございます。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
いや、本当にもういいんだ。
あなた

でも…

竈門炭治郎
竈門炭治郎
むしろお礼をするのはこっちだよ。ありがとう。禰豆子を助けてくれて。
あなた

いえいえ、そんなの…

竈門炭治郎
竈門炭治郎
ひとつ聞いてもいいか?
あなた

はい。何ですか?

竈門炭治郎
竈門炭治郎
あなたは、柱にも圧勝したのになんで鬼殺隊をやめたんだ?前は魅力がなくなったっていっていたけどそれは、何でなんだ?
あなた

…では、少々長くなりますがお付き合いいただけますか?

竈門炭治郎
竈門炭治郎
ああ、もちろん。
あなた

私がやめたのはある事件のせいでした。事件と言っても鬼殺隊なので鬼が出たというものなのですが。
五体ほどの鬼がある村を襲いました。そこまでなら珍しくないことですがそのときは違っていました。どれも十二鬼月並みの実力でした。おそらくはもう少しでそれになる予定だったのでしょう。
すぐに、その村に鬼殺隊が派遣されました。その数、約二十人。しかし、入ってきた知らせは鬼殺隊が全滅したというものでした。
すぐに、第二隊が派遣されました。その数、約三十人。その一人が私でした。
結果は鬼の全滅でしたが生き残った鬼殺隊は、私を含めて三、四人でした。ほとんどの者が死に、生きたものは地獄のような光景を目にしました。
そこで、私は、鬼殺隊に失望し、己の無力感を感じ、鬼殺隊をやめました。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
そんなことがあったのか。
あなた

ええ。そういえば、炭治郎君はなぜ鬼殺隊に入ったのですか。さっきの質問のお返しに教えてほしいのですが。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
ああ…。俺の家は炭を売っていたんだ。けして裕福ではなかったが、でも幸せだった。が、それが壊された。家族は鬼に殺され、禰豆子は鬼にされてしまった。俺だけ、街に出ていたから助かってそれで…。せめて、残った禰豆子だけでも人間に戻すと誓った。その時に鬼殺隊の存在を知り、入ることにしたんだ。
あなた

そんなことが?でも、炭治郎君は優しいですね。そんな風に思えるなんて。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
でも、任務を続けていると、自分の無力さをいやと言うほど感じて、でかいことを言っているのに、そんな実力はなくて、こんなんで俺、禰豆子を元に戻せるのかなぁってよく考えちゃって…それで…それで…
炭治郎君の目には大粒の涙が溜まっていてそれほどまでに辛かったんだなと知った。
おそらく、長男だからとずっと泣くのを我慢してたんだろう。それなら、私のやることは…

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