第14話

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2020/09/17 15:09
あなた

炭治郎っ!

私は、炭治郎に駆け寄った。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
ウウッ
炭治郎は痛みに耐えるようにうめきながら、体をこちらの方に寝返らせる。
あなた

炭…治郎…

私の目から涙がこぼれ落ち、炭治郎の服を濡らす。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
泣かないでくれ。俺は、
笑っているあなたが好きなんだ。
あなた

でも…でも…

炭治郎はニコッと微笑んで、
竈門炭治郎
竈門炭治郎
あなた、怪我はないか?
そう優しく問いかけてきた。
あなた

私は、ないけど、炭治郎が…

竈門炭治郎
竈門炭治郎
俺は、大丈夫だ。
そうは言っているが、血の量を見れば明らかだった。
あなた

大丈夫じゃないよ、この傷。

あなた

私、炭治郎には生きててほしい。
死なないで。

そう言うと炭治郎はすぐに、
竈門炭治郎
竈門炭治郎
もしこれで死んでも、悔いはないよ。
好きな人を守れた。
やっと、あなたを守れたんだから。
そう答えた。
見ててわかる。どんどん限界がきていると。
あなた

やだ。置いていかないで。
もうこれ以上、一人にしないで。
大切な人を失いたくない。

あなた

私、炭治郎と一緒にいて、
楽しかった、この時間がずっと
続いてほしかった。
ねぇ、お願い炭治郎、
死なないで。耐えて。生きて。

あなた

まだ約束果たしてないよ。

竈門炭治郎
竈門炭治郎
そう…だな…
返事…まだ…聞いてな…かった
竈門炭治郎
竈門炭治郎
でも…今の俺…に聞く資格…なんてない…
幸せに…できない…から…
これ以上…一緒に…いれない…から
あなた

ダメだよ、死んじゃ。
私の大切な人なんだから。

あなた

こんな気持ちはじめてだよ。

あなた

離れたくないって。

あなた

ずっと一緒にいたいって。

あなた

だから、炭治郎!

そこまで言うと炭治郎は、
竈門炭治郎
竈門炭治郎
ありがとう
竈門炭治郎
竈門炭治郎
ごめんね
そう言って優しく目を閉じた。
あなた

イヤァァァァ

あなた

逝かないで

あなた

なんで炭治郎なの

あなた

なんで私じゃないの

あなた

なんで庇ったの

あなた

これ以上一人にしないで

炭治郎の体を抱きしめながら、そう泣き叫んだ。
炭治郎を屋敷に連れて帰った。
しのぶさんが、一生懸命、出来る限りの治療をしてくれた。
それでも、起きる確率は、限りなく低いという。
それでも、私は、諦められなかった。
あなた

炭治郎…

私は、ずっと炭治郎の寝ている部屋にいた。
朝から晩まで。
他のみんなには、すごく心配された。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あなたさん。体を壊してしまいます。
時透無一郎
時透無一郎
ご飯食べなきゃ。
我妻善逸
我妻善逸
ちゃんと寝てる?
けれども私は、炭治郎のもとを離れなかった。
離れたくなかった。
この世で一番大切な人だから。
すごく後悔をした。
油断しなければ。
気を緩めなければ。
庇われなければ。
連れていかなければ。
返事を伝えていれば。
どれも、もう叶わない。
ならせめて、一緒にいたい。
そう思って、ずっと炭治郎の手を握っていた。
がしかし、ずっと見ていたせいで体が限界のようで、私は、炭治郎の体に上半身を預けて、覆い被さるように、寝てしまった。
あなた

炭治郎…

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