(( 優斗side ))
あなた「この音とこの音を合わせて 、ここは …… 」
無理してる 、絶対無理してる 。
俺らの曲とB少年の曲をこんな短期間で作り上げるなんて 。
無理してるに決まってる 。
前より痩せちゃったし 、顔色も悪い 。
食べる量も確実に減ってるし 、時々頭を痛そうに押さえてる 。
それでも 、一生懸命なあなたを見ると言えなくなるんだ 。
あんなにキラキラしたあなたの目は 、一度も見たことないから 。
『 ……… 』
あなた「よし 、あとは最後のサビだけ」
楽譜とペンを置いて 、またピアノに座るあなた 。
『あなた』
あなた「なに ?」
『無理だけは 、しないで』
あなた「分かってるよ 、大丈夫」
ねえ 、
この時俺があなたを止めていたら 、こんなことにはならなかった ?
瑞稀「あなた 、少しは休んで」
あなた「大丈夫 。それにこの曲仕上げたいから」
瑞稀「 ……… 休んでって言ってるんだけど」
あなた「大丈 … 瑞稀「大丈夫じゃねえだろ !!」
みずっくんの大声で稽古場にいた全員が振り向く 。
瑞稀「じゃあなに ?顔色悪くても 、目にクマができてても 、大丈夫だって言うの ?」
あなた「 ……… 」
瑞稀「無理すんな !」
あなた「 ………… 瑞稀には 、わかんないよ !!」
瑞稀「え ?」
あなた「瑞稀はわかるの ?私の気持ち !」
瑞稀「っ 、」
あなた「分からないんだったら言わないでよ !!」
あなたのこんな声 、初めて聞いた 。
温厚なあなたがこんな風になったことなんて一回もなかったのに 。
あなた「っ 、ごめん」
あなたは何も持たずに稽古場を飛び出した 。
『あなた !』
瑞稀「 ……… はあ」
涼「瑞稀 、」
瑞稀「俺さ 、ただ頼って欲しかっただけなんだよ」
涼「わかってる 。でも 、瑞稀は不器用だから」
瑞稀「ごめん」
涼「大丈夫 、ちゃんと仲直りしよう」
瑞稀「うん」
『あれ 、作ちゃんは ?』
蒼弥「作ちゃんならあなたちゃんのとこ行ったよ」
『そっか 、』
(( 龍斗side ))
『あなたちゃん 、』
あなた「あ 、作ちゃん …… 」
ベンチに座っていたあなたちゃんの瞳は潤んでいた 。
あなた「ごめんねっ 、騒いじゃって」
『大丈夫 。それより 、あなたちゃんどうしたの ?』
あなた「ほんとはわかってたの 、瑞稀くんが心配してくれてること」
『え ?』
あなた「だけど 、こんなこと今までなかったから 。認められて 、頼られることなんて」
『 …… どういうこと ?』
あなた「私は 、いつもお姉ちゃんに負けてたから」
(( あなたside ))
『お姉ちゃんはすごくて 、なんでも出来てた 。だからみんなお姉ちゃんを褒めて 、私を下に見てたの』
私がいじめられるようになったのも 、そのことがきっかけ 。
"なんで環奈ちゃんはできるのに 、あなたちゃんはできないの ?"
"あなたちゃんは 、双子のできない方なんだね"
そんな言葉を 、何度言われたか 。
きっと 、指の全てを使っても数えられない 。
『だから認めてくれたのが 、頼ってくれたのが嬉しくって 、』
ペンダントをギュッと握って 、涙を堪える 。
龍斗「あなたちゃん …… 」
作ちゃんはペンダントを握る私の手をそっと離し 、自分の手と重ねた 。
『作ちゃん 、ごめん 、ほんとにごめんねっ』
龍斗「 ……… 大丈夫 、大丈夫だよ」
作ちゃんは大丈夫 、そう言いながら 、私の背中を撫でてくれた 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。