第31話

# 30
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2018/09/15 13:48
『え 、どういうこと ?』


あなたちゃんは 、俺の言葉を無視して続けた 。


あなた「この曲ね 、私が作ったの」


あなた「みんなのことを考えながら作ってみたんだ」


"気に入ってもらえた ?"


なんて言いながら 、あなたちゃんははにかむように優しく笑う 。


『そんなの当たり前だよ !!気に入るに決まってるじゃん !』


あなた「龍我くん 、ありがとう」


雄登「俺も気に入ったよ 、この曲」


飛貴「俺この曲歌いたい !」


直樹「俺も 、」


大昇「歌ってみたい !」


一世「紅月さんが僕達の為に作ってくれた曲なら 、歌いたいです」


あなた「藤井さん 、岩﨑さん 、金指さん …… !」


大昇「てか 、俺と同い年なのに曲作れるってほんとすごいね !」


あなた「そんなことないですよ 、」


そう言ったあなたちゃんの瞳は 、悲しみの色をしていた 。


『あなたちゃ 、』


あなた「じゃあ 、楽譜と歌詞渡すから !」


……… 俺の言葉は 、また届かなかった 。





あなたちゃんから渡された楽譜と歌詞は 、見れば見る程あなたちゃんのすごさを思い知らされた 。


歌詞はちゃんとパート分けもしてあって 、わかりやすいように工夫もされていた 。


あなた「音はこれ !カラオケの方は2番目に入ってるから !」


"Red string"


そう書かれたCDを渡され 、慌てていると稽古場に響くスマホの通知音 。


あなた「あ !」


どうやらその通知音はあなたちゃんのスマホだったらしく 、画面を見たあなたちゃんは声を上げた 。



あなた「ごめんみんな !用事できたから先に練習しててもらえる ?」


雄登「わかった」


あなた「ほんとごめんね !」


パソコンを持って稽古場を出ていったあなたちゃん 。


『無理してないかな …… 』


そう呟いて伸ばした手はスッと空を切った 。









(( あなたside ))


『廉くんまだかな …… っ 、さむ』


肌寒い風が体を冷やす 。


厚手のパーカーをキュッと握り 、少しでも寒さを凌ごうと体を縮こませる 。


『あ 、そうだ』


鞄の中からウォークマンを取り出し 、イヤホンを両耳に付ける 。


重岡さんからいただいたCDをウォークマンに入れてから 、毎日聴いてる"アカツキ" 。


私の名字と同じで 、曲調も気に入ってる 。


アカツキを聴いていると 、後ろからトントンッと肩を叩かれた 。


『ん ?あ 、廉くん !』


廉「急に呼び出してごめんな 、」


『ううん 、忙しいのにありがとう』


廉「どっかのカフェにでも入ろうか」


『そうだね 。あ 、あのカフェとかどうかな ?』


廉「そやな 、そこにするか」





『それで廉くんはどんな曲にしたいの ?』


廉「うーん ……… かっこいい曲やな」


『じゃあかっこいい曲で 、あとはどんな物語がいいかな ?』


廉「物語 ?」


『私は曲を作る時にいつも物語を考えて作ってるの 。HiHiの曲は青春 、B少年の曲は片想い 、みたいな』



廉「へえ〜 、知らんかった !」


『でも 、廉くんのイメージはね 、ほんとに彼女を大切にしてるって感じ 。彼女が困ってたら 、一番に助けに行きそう』


廉「うん 、確かに俺もそうする気がする」


うんうん 、と首を縦に振る廉くん 。


『そしたらバラード系がいい ?明るい系がいい ?』


廉「バラード系がいいわ」


『わかった 、作ってみるね !』


廉「よろしくな !!」


そう言って廉くんは珈琲を一口啜った 。

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