～次の日の朝～

あなたside

監禁されて3日目、特に変わりは無く私はずっとロープで椅子に縛られている。

脱出する良い作戦も思いつかずに、ただずっと部屋の壁をぼんやり見つめるだけ。

暇だな～、なんて考えていたら、男が部屋に入ってきた。

ガチャ

男は部屋の角にテレビを設置した。

そして、ニュース番組をかけて部屋を出ていった。

アナウンサー「この時間はニュースをお伝えします。」

アナウンサー「まずはこのニュースからです。
おとといの12時頃に、○○区の○条○丁目辺りで誘拐事件がありました。警察によると、全身黒い服の男が若い女性を車に無理やり連れていき、そのまま逃走したそうです。」

え、これ私のことじゃん！

アナウンサー「犯人はまだ見つかっておらず、捜査は難航しています。被害女性は20代前半で、最近メールでのトラブルがあったそうです。」

アナウンサーは、女性の名前は言っていなかった。世間の人は、まさか被害者が私だとは思っていないだろう。

アナウンサー「続いては速報です。ジャニーズ事務所所属の、King&Prince平野あなたさんが活動休止を発表しました。」

え！私が活動休止？？

アナウンサー「所属事務所は、活動休止の理由を体調不良としています。平野さんは今週から無期限で休止し、King&Princeは6人で活動するということです。」

活動休止の理由を体調不良にしたんだ…

そりゃそうだ。

誘拐されたからお仕事ができない、なんてメディアに言ったら、世間の人々や私のファンはとてもびっくりするだろう。

それに、ファンのみんなを混乱させたり心配をかけたりすることはできない。

これが一番良い決断なのだろう。

今の私は後悔しかない。

あの時、なんで素直に廉の言うことを聞かなかったんだろう。

せっかく廉が心配してくれて、家まで送るって言ってくれたのに…

結果的に、送ってもらうよりもさらに大きな迷惑をかけることになってしまった。

もし本当に、この部屋で残りの人生を過ごすことになったら私はあの時の自分を一生恨む。

自分の情けなさと後悔から、気づいたら涙が溢れていた。