これが正しい対処法だとは思わないけど、
一旦、一旦知らない素振りを見せなきゃ。
声が震えてないか心配だった。
だって目の前にいるから。あの人が。
まるで私が白けたことを見透かしていて、
誰かわからないなんて言わせないって、
そういう顔をしている。
言ったらいけない。
こういうとき、質問に答えたらいけない。
会話が成立したら負け、相手のペースに乗ることになる。
カラン、カラン。
店のドアベルが音を鳴らした。
きっと今私は、店長さんには
酷い顔で、真っ青な顔で
いかにも倒せそうな弱さを見せている。
声ってどう出すんだっけ、なんて
今までは小説や漫画でしか見てこなかった表現
本当に、あるんだ。
ばくばく心臓が飛び出そうで
ゆっくり、大丈夫って言い聞かせながら思い出して
大丈夫、だけど
だれなの。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!