葵衣side
未薗と舘さんが、神妙な空気の中、話している。
あの二人、どういう関係?
館さんは「自分のお店の常連」って言ってたけど…もしかして、未薗と同じく未来から来た人…?
こいつ、発音自体は間違ってないんだけど、どうも日本臭いんだよな…
こいつ、やべぇ。
発音の神だ。
琉生が翔に飛びついた。
ようやく未薗が戻ってきた。
…けど、妙におかしい気がする…
「琉生と別れたいと思ってる」
…は?
未薗…
お前…言ってることと表情が違うだろ。
琉生は、未薗に向かって微笑んだ。
お前までそんな調子でどうするんだよ!
未薗は作り笑いを浮かべる。
そんなんじゃバレバレだっての。
コツ、コツ、コツ…
二人とも無言で、足音だけが耳に響く。
私は、思い切って、口を開いた。
未薗が目を見開いた。
未薗の顔には、『後悔してない』と書いてあった。
未薗は、清々しい顔で笑った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!