第5話

ド緊張プリンセス
106
2019/07/28 16:33
深田 貴之
緊張しているのか?
 深田が顔を覗き込んできた。
本宮 琉偉
べ、別にそんなことないから
 図星なのを知られたくなかったので、慌てて顔をそらした。

 多分、人生で緊張した場面ランキングトップ5にランクインしているほど、僕は緊張している。

 そわそわして落ち着かないし、発汗量もやばい。滝のように流れている。
深田 貴之
そうなのか。俺は緊張しているがな
 いや、ぜんっぜん涼しい顔してますが!?

 コイツのメンタルどうなってるんだ。ハンマーで叩いてもヒビなんか入らなさそう。
本宮 琉偉
じゃ、そろそろスタンバるから
 ひとりになった方が落ち着くかもしれないので、自分の待機場所に行くことにした。

 そそくさと向かおうとしたとき、
深田 貴之
琉偉
 普段と変わらない声で呼ばれた。振り返ると、深田が微笑んでいた。

 その笑顔を見た途端、前みたいな沸騰現象が起りかけ、僕は慌てて背を向けて走った。

 クソッ! アイスショーだから、王子みたいな衣装着てるから余計かっこいいんだけど!?

 




 今回、僕たちが披露するプログラムのテーマは『永遠の愛』。ほんとくっさいテーマ。

 コンセプトとしては、深田が王子で、僕がその王子を一途に想う異国のお姫様……って感じ……。

 なんでこの僕がお姫様なんだよ。しかも、よりによって、深田王子に愛してる♥️とか!



 そういうわけで、僕は白いフリルがエレガントなドレス風の衣装。ドレス風だからね。もちろんズボンだからね。





 待機場所に着き、深呼吸を丁寧に何度もした。

 そして、だいぶ心臓が大人しくなってきたとき、舞台のリンクから拍手の音が聞こえてきた。


本宮 琉偉
……よし
 あの出来事があってから、今まで以上に練習した。リハも特に問題はなかった。

 あとは、本番でどれだけ自分の力を発揮できるか。

 いつもだったらFiabaのみんながいるけど、今回ボーカルは僕だけ。
 下手クソだったら後でネットで叩かれまくるんだろうなあ。





 でも、舞台に立つのは僕だけじゃない。
司会
スペシャルゲスト、本宮 琉偉さんでーす!
 コールと同時に歓声が聞こえてきた。
 たくさんの人が待っているんだ。




 そう、僕らはアーティスト。自分の全てを魅せて、たくさんの心に響くパフォーマンスを。

プリ小説オーディオドラマ