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2019/07/23

第2話

きっかけ
「君のソロシングルを出そうと思う」

 社長からそう告げられたとき、えっ、と思わず声が出た。

 隣にいたマネージャーに肩を優しく叩かれた。

興奮しすぎて言葉が出ず、嬉しさを表現するのにうなづくことしかできなかった。




 僕は、男性アイドルグループ『Fiabaフィアーバ』のメンバー。

 確か、小学校低学年のとき、社長にスカウトされたのがきっかけだったと思う。
 それから過酷なレッスンの日々を乗り越え、中学2年生の夏、Fiabaとしてメジャーデビューを果たした。

 ちなみに、メンバー内最年少ということもあって、末っ子として可愛がられている。
 リーダーのしゅんも、お調子者な天舞てんまも、真面目なかけるも、大好きでかけがえのない大切な仲間。

 だからこそ、末っ子でもひとりでやれることを、彼らやファンに見せたかった。
 そうすれば、もっと僕のことを知ってもらえると思ったから。



「それでね、今回の曲を使いたい人がいるんだ」


 
本宮 琉偉
そうなんですか!?
 今まで生きてきた中で一番の笑顔が弾けた。

 もう僕を求めている人がいるなんて!

 でも、

「フィギュアスケーターの深田 貴之選手を知っているかな。君とは同じ高校の同級生なんだが」

 同じ高校、という言葉に一瞬で笑顔を消された。

 しかも同級生だなんて、僕の素顔を知っている可能性が高い。
 テレビの王子様キャラとはかけはなれた、無愛想でひねくれた陰キャということを。


「7月のアイスショーで、今シーズンのエキシビションナンバーを披露するそうだが、ぜひ、君の曲で滑りたいと依頼が来てね。だから、今回ソロデビューを決めたんだ」

 内容はこれだけではなかった。

 なんと深田は、アイスショーでは僕の生歌にのせて滑りたいというのだ。
本宮 琉偉
そ、そうですか……
 ほんとは凄く断りたかった。でも、これを断ってしまえば、ソロデビューの話もなくなってしまうかもしれない。

 それによく考えれば、同級生といっても同じクラスではないし、お互いをあまり知らないはず。
 深田は練習ではCDを使うらしいし、学校で関わる必要もない。必要なときはリハーサルと本番だけ。



 一呼吸置いて、営業スマイルをつくった。

本宮 琉偉
わかりました。僕、やります