私の目線が、揺れる。
背中に当たった手の感触はほんの一瞬。
顔が床につきそうになる。
いや、つく。
どうしたら、いいのか。
やばい、死ぬっ!
どうしたらいい??
振り向こうとしている先輩が目に入る。
ふり、向か、ない、で。
死にたくない。
死にたくない、死にたくない、
まだ、死にたくない。
え?
『ゴンっ!!』
ついた右腕が床に思いっきり打ち付けられる。
私、死んだ。
痛いのは嫌だな。
そう思いながら私は目を思いっきりつぶる。
死にたくないけど。
ゲームオーバーになったのは私だから。
麗仁ちゃん、ありがとう。
友達になってくれて。
うん、ありがとう。
機械音が聞こえて私は更に思いっきり目を瞑る。
あれ、あれ?
私、死んでいない?
うっすら目を開ければ、自分のTシャツについているのは血??
誰の血?
首をさわれば、私の首からは血が流れていない。
じゃあ、いったい。
思わず下を見れば…、、、、
成瀬の冷たい…。
冷静な声に私は少しばかり落ち着きを取り戻す。
いや、取り戻してはいない。
正確には、物理的に前を向き直した、だけ。
でも、なんで。
機械音が鳴り響き、私は膝から崩れる。
自然と出た一筋の涙は、私の頬を伝って。
そこからは、目に溜まった涙が溢れ出した。
なんで、なんで、絢都が、
なんで絢都が死んだの?
3年のリーダーの先輩の無駄に明るい声が聞こえて、気持ち悪い。
そんな明るい声聞きたくない。
一度でた涙は止まらず。
絢都が、、、
彼が最後に放った『いいよ、死なせない。』
その一言が私の脳裏から離れてくれない。
彼の顔が私を呪うように現れる。
なんで、、私の心の声が絢都に聞こえた?
なんで?
私の足元で首からを血を流し、既に息絶えている絢都を、私はゆすり続ける。
息が吹き返すことがないこともわかっている。
もう一度目が開けることがないことも知っている。
絢都に、会うことができないことも理解はしている。
私の脳は理解してるんだよ?
でも……。
心が拒んで受け入れてくれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。