アスカの声で、休憩は終わりを告げる。
ゲームが始まって3時間ほど。
未だ午前中なのだけど、私にはもう1日も経ってしまった気がする。
私の隣から成瀬の呟きが聞こえた。
何か、違和感のある呟きだったが、私はアスカに集中し直す。
ーーーダルマさんが転んだのルール!
➀それぞれ違う学年の3チームが戦い、だるまさんがころんだは3ターン行われる。
➁鬼をタッチしたらそのターンは終了。
ただしタッチされても鬼は死なない。
➂それぞれのチームのリーダーが、自らのチームが鬼のターンの時に鬼を務め、鬼は頭にカメラをつけ、振り向いた時にそのカメラに『動いた』と認識されたものは死んでしまう。
➃3チームの中で最終的に生き残っている人が多いチームの勝利で、生き残っていても負けたチームであれば死んでしまう。
➄同数の場合は、もう一戦行う。
アスカの説明したルールと、私たちがよくやるルールとの違いは、動いたら『負け』ではなく、『死ぬ』こと。
アスカの声と同時に、体育館に巨大パネルが現れ、対戦チームが組まれた表が表示される。
えっと……、、私たちは[2-3E]チームだから…、、
[3-4F]チームと、[1-1H]チーム…の人たち…。
3年生の先輩らしき人の呼びかけで私たちは、声の方に向かった。
そう言ったのは、私たちを呼んでくれた3年生チームのリーダーの先輩だった。
この人…、、負ければ自分が死ぬってわかっててこんなこと…、、してるの?
成瀬が名乗り出た後、一年生のリーダーが鼻をすすりながら名乗り出た。
一年生チームの4人の目が少しばかり赤く腫れている。
きっとさっきの休憩時間に、泣いて泣いて。
したのだろうけど……、、このゲームは泣いて勝てるわけじゃない。
泣いて生き残れるわけがないんだよ。
そんなことを考えていれば、私は自分が壊れていることに気がついてしまった。
私、、、
こんなに冷たい人だった…、のか。
前までの、
ゲームが始まる前までの私はきっと、こんなに冷静に考えていられることなんてなかった。
なかったはずなのに。
私…、、
右肩を叩かれ、後ろを振り向けば、肩を叩いたのは絢都だった。
絢都は私の頭を軽く撫でると、にんまりと微笑んでくれる。
沈黙の末に、口を開いた絢都は、凄く真剣な表情で。
咄嗟に彼を好きになった時のことをおもいだしたが、すぐにその記憶を封じ込めた。
今、そんなことを考える暇はない。
暇はないのだけど。
暇はないのだけど、頭は絢都のことでいっぱいだ。
このままじゃ、私は死ぬ。
浮かび上がってくる不安と恐怖をかき消すように、私の手が絢都の大きな手に包み込まれる。
絢都の顔を見上げれば安心する顔。
だけど、私の不安はぬぐいきれない。
『なんでか』はわからないけども。
東雲さん…いや、麗仁ちゃんに呼ばれ、私は我に帰る。
絢都の手は繋がれたままで。
始まるのは恋とか、そんなんじゃなくって。
デスゲーム。
第2 ゲームが始まる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!