第14話

セカンドゲーム(6)
58
2019/06/16 08:56
始まった1年生が鬼の番。
3年生が2人も死んでしまっている中、私たちは未だタッチすることができていない状況だった。
[1-1H]チーム=リーダー
ダルマさんが転んだ。
一年のリーダーの『ダルマさんが転んだ』は高速で、早口言葉のよう。


後ろを向いてはすぐに振り返られてしまう。



だから、動くタイミングが全くない。
実質、進んでいるのはほんの少しずつで。

私たちが鬼役に届くのが先か、カメラセンサーに反応されてしまうのが先か。



全くゲームは進まないが、着実に私の足は進んでいる。

少しずつ、少しずつ、進んでいる。
[3-4F]チーム=リーダー
あーーー!!!
3年のリーダの先輩の叫び声がして、私は私たちよりも前にいるその声の主を注目する。

鬼役は、相変わらずで。



叫び声を聞いても惑わされることもなく、早いペースで振り向いていく。


第2 セカンドゲーム開始の時に、あんなに泣いていた1年生だと、誰が思うだろうか。




そんなほどの冷酷さ。
[3-4F]チーム=リーダー
もう、まどろっこしいぃ!!
そう叫んで、鬼役が後ろを向いている間に、走り出す先輩。
リーダーの先輩だけじゃなくて、もう1人の先輩も走っているのだから、もう何がなんやらで。
私の頭は理解が追いつかない。
[1-1H]チーム=リーダー
ダルマさんが転んだ。


もうだめだ、先輩たちはアウトに…。
なんて思った時だった。

目線だけ先輩たちにやれば、きちんと止まっている。
それも、鬼役に腕を伸ばせば届くほど。
鬼役の顔が曇るのがわかる。





少しばかり悲しそうに顔を歪ませれば、すぐに後ろを向く。



諦めたかのように今度はゆっくりとした声だった。

[3-4F]チーム=リーダー
タッチ!!
カメラセンサー
ピ、ピ、ピーーー
鬼がタッチされタことヲニンしキしましタ。
機械音が響く。
終わった。


私はホッとして腰が抜ける。
隣を見れば、麗仁ちゃんも同じようで、顔を見合わせて緊張がとけた。
カメラセンサー
鬼ヲこウタいしテくダさい
アスカ
これで、全チーム終わったね!
勝ったチームを確認した後に負けたチームはゲームオーバーにするから、少しの間まってて!!
その言葉を聞いて、私は立ち上がると、軽く残りの人数を確認する。

私たちのチームが残り3人で、他が2人ずつ。
安堵の気持ちがこみ上げてくる。
第2 セカンドゲームは、私たちが勝ったんだ。



勝ちを噛み締めた私はすぐに1年生のリーダーの元へ詰め寄った。

勢いよく胸ぐらを掴めば、麗仁ちゃんが止めに入ってくる。


が、そんな静止を聞けるはずもない。
ごめんね、だけどこれだけは。



どうしても聞きたい。
時雨 梨緒
なんで、私の背中を押したの?
[1-1H]チーム=リーダー
な、なんでって。
生きたかった、から、です。
もう1人の残った1年生の子の手を握りながらはっきりというそいつの目は、しっかりしていた。

もうすぐ死ぬと知っていて、こんなにしっかりとした目つきだなんて。





泣きじゃくっていた無垢な彼はどこに。
私は胸ぐらを掴むのをやめた。

ゆっくりと下ろすと、そいつは少しばかり咳をして、私に頭を下げた。
[1-1H]チーム=リーダー
ありがとう、ござい、ました。
[3-4F]チーム=リーダー
私たちの分まで生きてね!
お礼の言葉にこれからの励ましの言葉。

涙がこみ上げてくるのは何故なのか。





私は、私たちは生きるために他チームを蹴落とした。
恨まれても同然なのに。


この気持ちは、同情の感情なんかじゃない。
何かわからないけど、私は蹴落とした人たちの未来を背負っているのだなと、今頃になって気がつき出した。
成瀬 聖
時雨…。
時雨 梨緒
うん、わかってる。
私を心配してくれたのか。
成瀬の呼びかけに応じる。

わかってるよ、泣いてても何も変わらないことなんて。



だけど、これで最後にするから。
くよくよするのは最後に、する、から。


涙を拭けば、目の前は一瞬にして赤くなった。
ゲームオーバー。


でも、でも。

自分が生きていることが無性に嬉しかった。

プリ小説オーディオドラマ